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清水雅彦の映画評

第0051回 (2006/05/17)
『グッドナイト&グッドラック』〜情報の送り手と受け手の質が問われている

東西冷戦下の1950年米国で、ジョセフ・マッカーシー上院議員による「赤狩り」が始まった。マッカーシーの報復を恐れてマスコミも沈黙する1953年、三大ネットワークの一つ、CBSニュースキャスターのエド・マロー(デヴィッド・ストラザーン)とプロデューサーのフレッド・フレンドリー(ジョージ・クルーニー)は、報道番組「シー・イット・ナウ」でマッカーシーを検証することに。マッカーシーの報復が始まってもひるまず第二弾を1954年に放映。それに対して、マッカーシーは自ら番組に登場し……。

本作品は、自ら出演しつつ、監督・共同脚本を務めるジョージ・クルーニーの作品。この間、政治的映画に関わり続けるクルーニーが大活躍です。もちろん、今この映画を作ることの意図は、「テロ」の恐怖におびえて市民の自由を奪うアメリカ政府批判にあります。番組中のマローの「アメリカは、国内の自由をないがしろにしたままで、世界における自由の旗手となることはできない」という言葉は、現在でも通用するものです。

マローは、1958年の報道番組制作者協会でのスピーチで退廃と現実逃避のテレビを「メカの詰まったただの箱」と批判します。日本でも同じ1950年代に大宅壮一が「一億総白痴化」と表現しました。さて、これらの言葉を日本のテレビ、さらには新聞・雑誌関係者はどう受け止めるのでしょうか。マスコミ人も色々ですが、戦前に「言わねばならないこと」を言い続けた桐生悠々や清沢洌も知らず、就職活動先には商社や銀行なども入っていて、入社後は高給に満足してしまうだけの人間が多数派だったら恐ろしいことです。

その後、マローは利潤追求の経営陣と対立し、結局、退社します。国民がマローを守らなかったともいえます。日本でも、共謀罪や教育基本法改正問題よりも、覗き見趣味的に事件や芸能ネタを伝えるワイドショー番組・週刊誌のはしゃぎぶりが目につきますが、こういうものを見たり買う人が多いわけです。情報の受け手の質も問われています。

2005年アメリカ映画
上映時間:1時間33分
http://www.goodnight-movie.jp/
ヴァージンTOHOシネマズ六本木ヒルズほかで上映中

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