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清水雅彦の映画評

第0054回 (2006/06/14)
『インサイド・マン』〜洗練されさりげなく社会性もある娯楽作品

白昼、マンハッタン信託銀行に4人組の銀行強盗が押し入り、行員や客に自分たちと同じ作業服・覆面・サングラス姿にさせて立てこもった。ニューヨーク市警のフレイジャー(デンゼル・ワシントン)が現場に駆けつけ、主犯格のラッセル(クライブ・オーウェン)と交渉を始める。一方、銀行の会長は「ある秘密」を守るために、ホワイト弁護士(ジョディ・フォスター)に犯人との交渉を依頼する。犯人と人質との区別がつかないため、警察も手を出せなかったが、犯人が人質を射殺したため、警察は強行突入を決定。突入後、中から一斉に同じ格好をした人質と犯人が飛び出してきて……。

本作品は、これまで社会的な映画を作り続けてきたスパイク・リー監督による娯楽作品。脚本は弁護士から脚本家となった(本作品がデビュー作)ラッセル・ジェウィルス。犯人の狙いはお金ではなく、人質に犯人と同じ格好をさせたり、一人も殺さないというやり方などの設定が面白い。展開も次はどうなるかと画面に釘付けになります。

映画の冒頭でラッセルが「完全犯罪」を予告しますが、実はこれは観客に対する挑戦でもあるのです。ネタバレになるので詳細は書きませんが、とにかく警察や観客より犯人(作品)が上手であること。犯人と人質をわからなくさせるいくつかのやり方、隠した携帯の探し方、盗聴、人質の射殺などで、計画の緻密さと頭脳の明晰さを発揮します。そして、「堂々と正面から出ていく」などヒントが散りばめられているのに、見抜くことができません。マジックと同様、種明かしされると大したことはないのに見抜けない。

また、本作品はさりげなく暴力的なゲームや、特に警察の人種差別を批判している点でも巧妙。娯楽作品であり、脚本がいいからとはいえ、スパイク・リーとデンゼル・ワシントンが組む映画ならではともいえます。見終わった後で、こういう銀行強盗(犯罪であり悪のはず)もありではないかと思わせる点でも良くできた娯楽作品です。

2005年アメリカ映画
上映時間:2時間8分
http://www.insideman.jp/index.php
全国各地で上映中

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