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清水雅彦の映画評

第0057回 (2006/07/24)
『RENT/レント』〜内容面の限界と表現面の素晴らしさ

1989年12月24日のニューヨーク、イースト・ヴィレッジ。元人気ロックバンド・ミュージシャンのロジャー(アダム・パスカル)と、ドキュメンタリー映像作家を目指すマーク(アンソニー・ラップ)が一緒に住むロフトは、家賃(レント)の滞納により電気も暖房も止められた。その二人を久しぶりに訪ねてきた哲学教授のコリンズ(ジェシー・L.マーティン)は路上で強盗に襲われ、ストリート・ドラマーでドラッグ・クイーンのエンジェル(ウィルソン・ジェレマイン・ヘレディア)に助けられ……。

本作品は、1996年に上演が始まり、ブロードウェイで大ヒットしたミュージカルの映画化作品。台本・作詞・作曲はジョナサン・ラーソン(初演を前に35歳で大動脈瘤により急死)。ブロードウェイ初演の舞台に出ていた主要キャスト8人のうち6人が同じ役で出演しています。1980年代からアメリカで猛威を振るい始めたHIV発病への恐怖(主要キャスト中4人がHIV+)、世間の偏見、貧困などに対して、懸命に日々を生きるマンハッタンの若き芸術家・同性愛者たちの1年間を描きます。

これを見てまず思ったのは、生活と社会保障の貧困さを招いている1980年代レーガン政権以降の新自由主義に対してなぜ若者は疑問に思い、闘わないのかということでした。結局、関心事は愛なのかと。そういう意味で、アメリカでの『RENT』のヒットは、今の生活苦の原因を隠蔽し、愛に救済を求めさせるという効果があるでしょう。

とはいえ、ミュージカルという表現形式の素晴らしさを感じさせます。映画冒頭の“Seasons of Love”の迫力。苦難にもめげずお互いを支える友情と愛、夢の実現の途上で経験する苦悩、伝わってくる意志の強さ。見た後に何も残らない『M:i:V』に比べれば、生きることの素晴らしさや人とのつながりの大切さを残してくれます。様々な人種がぶつかり合うアメリカで、色々な表現方法が存在することを羨ましくも思います。

2005年アメリカ映画
上映時間2時間15分
http://www.movies.co.jp/rent/
映画は上映終了、11月にミュージカル再々来日公演

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