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清水雅彦の映画評

第0058回 (2006/07/28)
『日本沈没』〜この作品で「沈没」するのは……

駿河湾で発生の大地震に遭遇した深海潜水艇パイロットの小野寺(草なぎ剛)は、ハイパーレスキュー隊の阿部(柴咲コウ)に助けられる。太平洋プレートの異常現象による日本沈没を分析する政府の会議では、地球科学博士の田所(豊川悦司)が1年もたないことを主張する。山本首相(石坂浩二)はこの仮説を重視して、鷹森(大地真央)を危機管理担当大臣に任命。日本国民受け入れ要請のため中国へ向かおうとする山本だが、大地震による阿蘇山の噴火で飛行機が墜落。日本全土に非常事態宣言が出され……。

本作品は、1973年に小松左京が発表した小説映画化作品のリメーク。監督は『ガメラ』シリーズで特技監督を務め、『ローレライ』に次いで長編作品監督2作目となる樋口真嗣。撮影には防衛庁・三自衛隊、東京消防庁が全面協力しています。

小泉首相似の山本首相の髪型や鷹森大臣のファッションショーのような服装もあきれますが、小野寺と阿部の恋はしらけて見ていられない。設定も不十分です。73年の小説と映画は、日本の高度経済成長末期、石油危機を経験した時期だからこそインパクトがありました。「経済大国」とはいっても、トリノ五輪でメダル一つしかとれないようにスポーツはダメ、宇宙開発で中国に先を越されたように科学技術もダメ、バブル後の長期不況と「較差社会」で経済も政治もダメ、アジアを中心に対外関係もダメな「没落国家日本」をもっと描くべきです(福井晴敏を俳優として使っている場合ではない!)。

見ていて興味深いのは海洋研究開発機構協力による深海掘削船などの活躍振りで、見応えがあるのは特撮監督の神谷誠と特技統括・監督補の尾上克郎の奮闘による特撮(日本の鳥瞰図が特にいい)。いいのはその程度、時代の設定や人間の描き方は全然ダメで、派手なだけの中身のないハリウッド映画みたいなもの。これが怪獣もの特技監督出身者映画の限界でしょうか。「日本沈没」というよりは「樋口監督沈没」作品です。

2006年日本映画
上映時間:2時間15分
http://www.nc06.jp/
全国各地で上映中

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