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清水雅彦の映画評

第0072回 (2006/10/29)
『ワールド・トレード・センター』〜「あの」オリバー・ストーンが、これ?

2001年9月11日、ニューヨークはいつものような朝を迎えていた。しかし、ワールド・トレード・センター(世界貿易センタービル)北棟に旅客機が衝突。ニューヨーク港湾局警察の警察官たちは被災者の救助に向かう。班長のジョン・マクローリン(ニコラス・ケイジ)は、ウィル・ヒメノ(マイケル・ペーニャ)らと北棟に入ると、突然、ビルが崩壊。2人はビルの瓦礫の下敷きになり、身動きがとれなくなり……。

本作品は、「9.11事件」のワールド・トレード・センター崩壊で生き埋めになった実在の2人の警察官と2人の妻たちを中心に物語が展開していきます。監督はオリバー・ストーン。原案はマクローリン及びヒメノ両夫婦。マクローリン及びヒメノ両氏と、現場で実際に救助活動に携わった警察官・消防士50人以上がエキストラ出演しています。

ビルに旅客機が衝突した理由もわからず突入した2人が、気がついてみれば生き埋めになっており、痛みと絶望を感じつつも励まし合い、救出されるまでの姿には感動します。勇気と家族愛と善意が素晴らしい。しかし、映画の最後の方で、犠牲になった港湾局職員1人1人の名前と、2人を最初に発見した海兵隊員のその後の説明文が表示されることで、一気にしらけてしまいました。もちろん、映画自体はストレートに政治的なメッセージを発していません。この映画の捉え方も人それぞれでしょう。とはいえ、私には「テロはひどい」というメッセージでとどまる映画にすぎないと思いました。

さらに、本作品パンフレットにあるインタビューで、オリバー・ストーンが「あの日、人種を越えてアメリカが一つになり、世界が支えてくれたということを忘れてはいけない」と答える始末。『7月4日に生まれて』『JFK』などで鋭い政府批判をしてきたストーン作品だからこそ、期待はずれの度合いも大きい。「ビル崩壊は建物内部での爆発が原因」ということをほのめかす描き方でもあれば、ストーンらしかったのですが。

2006年アメリカ映画
上映時間:2時間9分
http://www.wtc-movie.jp/top.html
全国各地で上映中

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