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清水雅彦の映画評

第0075回 (2006/11/20)
『デスノート the Last name』〜映画だけにとどまらない警察の問題

夜神月(藤原竜也)が「キラ」ではないかと疑うL(松山ケンイチ)の推論をかわし、警察とLとのキラ対策室に入った月。今度は死神レムがもう1冊のデスノートを地上に落とし、アイドルタレントの弥海砂(あまねミサ/戸田恵梨香)が「第2のキラ」になる。キラを崇拝する海砂は月に協力を申し出て、月はLを消そうと企むが、Lにより海砂はキラ容疑でキラ対策室に監禁される。さらに、「第3のキラ」が現れ……。

本作品は今年6月公開開始の『デスノート』の後編。原作単行本は7月に最終巻の12巻が刊行され、全12巻の総発行部数は2100万部を突破。映画の前編もアジアの国々で公開され、ハリウッドからもリメイクのオファーが来ているといいます。

そんな「大人気」の本作品ですが、後編を見ての感想もこの映画評第56回で書いた前編の感想と基本的には変わりません。確かに、原作は子ども向け漫画雑誌(『週刊少年ジャンプ』)連載のものですが、「大人になれない青年・中年」も「少年」向け漫画雑誌を読んでいるようですから、単純化しないで、例えば月を冷酷になっていく「殺人鬼」とせず、警察の捜査手法も合法的に描いた方が面白くなったでしょう。月とLとの「頭脳戦」も練られていますが、月と海砂が月の部屋で謀議する無防備さや、海砂の月への感情は「漫画的」。それはともかく、月の「正義」には全く共感できませんが、Lと警察の捜査方法はさらに違法性が増し、それをさらりと描くところが悪質ともいえます。

そういえば、9月に原作者の1人、小畑健さんが銃刀法違反で現行犯逮捕されました。車のコンソールボックスに、刃渡り8.6センチのナイフを所持していたとのこと。警察官に職務質問や所持品検査を求められて、任意なのに応じてしまうほど法律に無知だったのでしょうか。一方で、本人は「キャンプ用に持っていた」と主張したそうですが、警察もこの程度で現行犯逮捕するとは。この件は偶然のことで、『デスノート』の警察の描き方が気に入らないから逮捕したわけではないでしょうが。しかし、この微罪逮捕のほか最近でも警察官による郵便局強盗や飲酒運転の続発など現実の警察も危険です。

2006年日本映画、上映時間:2時間20分、全国各地で上映中
http://wwws.warnerbros.co.jp/deathnote/

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