日本民主法律家協会

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法と民主主義

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法と民主主義2017年7月号【520号】(目次と記事)

特集★「学び」への権力的統制を許すな
◆特集にあたって………編集委員会・丸山重威
◆「政治の劣化」「行政の劣化」とは何か──どこに問題があるのか、どうすべきか………五十嵐 仁
◆公正中立な官僚を生み出すために必要なこと………中野雅至
◆背景にある政治資金問題──「死の商人」の買収政治からの脱却………上脇博之
◆デモクラシーを破壊する安倍政権の情報・メディア戦略──民主主義の不可欠の要素、ジャーナリズムの再確立へむけて………吉原 功
■問われる「劣化」の事実………「法と民主主義」編集委員会
◆ 「日報隠し」と「戦闘」の事実──南スーダンPKO
◆9割引国有地売却疑惑の闇  森友学園事件と「忖度」
◆ 原発被害は「自己責任」  質問に「無礼なこと言うな!」
◆「危機」に便乗、武力で「威嚇」  「米艦防護」と「共同訓練」
◆異論はつぶせ!  相次いだメディア攻撃
◆国会もメディアも「道具」  答弁拒否し「読売を読め」
◆政府は「言葉」も変えるのか  結論ありきの答弁書
◆官邸は何でも知っている…  強化された体制で「恐怖政治」?
◆共謀罪を通すためなら何でも!  慣行無視極まる異常国会
◆国民の代表「魔の二回生」の資質  政治家の「初心」は
◆勾留5ヵ月、問題はないか?  沖縄に対する差別と弾圧
◆究極の行政私物化  「特区」使ってオトモダチ優遇
◆政治劣化の体現者たち  都議選自民党惨敗の立役者
◆憲法も慣行も無視する独裁体制  国会召集の請求、閉会中審議


連続企画●憲法9条実現のために〈14〉「戦争で平和はつくれない」自衛官からの発信─ベテランズ・フォー・ピース・ジャパン(VFPJ)始動!………井筒高雄/武井由起子
司法制度委員会・公開研究会〈2〉平成の司法制度改革を振り返る………飯 考行
司法をめぐる動き・大崎事件二度目の再審開始決定 ──第3次再審請求により再び開かれた扉──………増山洋平
司法をめぐる動き・6月の動き………司法制度委員会
メディア・ウオッチ2017●《政治の姿勢、メディアの姿勢》大切な情報は伝えられたか 都議選前後とニュースの視点………丸山重威
あなたとランチを〈№28〉………ランチメイト・飯島滋明×佐藤むつみ
インフォメーション 定時総会アピール/第13回「相磯まつ江記念「法と民主主義」」賞の選考結果について
時評●先制核攻撃の威嚇が強まるなか トランプ・北朝鮮・非戦非核を考える………浦田賢治
ひろば●共謀罪・内閣支持率・新理事長・9条改憲など………米倉洋子


劣化する政治と行政──議会制民主主義の危機

◆特集にあたって
 委員会審議を打ち切り、本会議での委員長報告で採決を決めた参議院は、討論時間だけでなく、投票時間まで制限した一切の議論を封鎖して、共謀罪創設法案を強行しました。第一九三通常国会は、会期を延長することなく閉会しましたが、問題は積み残されたままで、閉会中審査と夏の政局に引き継がれています。何があっても高い支持率を誇っていた安倍内閣も、各メディアの調査でも軒並み内閣支持率は低下。ついに三〇%を割るところまで来ています。
 そして、紛糾の末、首相が出席する予算委員会は、七月二四、二五日の両日、質問時間は、与党三、野党七で割り振られる形で開かれることになりましたが、閉会中審議を前にしても、新たな事実が明るみに出てきています。
 「私は知らなかった」と国会答弁した稲田朋美防衛相が、実は自分が出席していた会議で「隠蔽」が決まった、という事実が報道されたり、山本幸三地方創生担当相が、「決定」より二カ月も前に開かれた獣医師会との意見交換の会議で、加計学園と今治市の国家戦略特区について費用分担について説明していたとする議事録が公開されたりしています。両大臣は否定していますが、本当はどうなのか?
 安倍政権は、閉会中審議を乗り切り、内閣改造でこれを乗り切ろうとしている、とされていますが、とても事態は収まりそうにありません。
 この国会は、共謀罪創設法案を軸に議論が行われましたが、大臣や官僚による暴言、不祥事、問題行動が、次々とメディアや国会論戦の中で取り上げられた国会でもありました。政府は弁解し、言い逃れ、他に問題を逸らすことに躍起でした。「自民一強のおごりだ」「その根源は小選挙区制にある」などと解説されましたが、どの問題も時間がたち、「嵐」が過ぎると、それで終わり。誰も責任を取ることなく、過ぎ去り、「前例」だけが残りました。以前なら、辞任して当然の大臣も居残り、結局社会がこうした状況を認めてしまう結果になっています。
 「国会の劣化」、「政治の劣化」と言われました。しかし、ひとつひとつの問題を論理的、法的に突き詰めてみると、実は、民主主義を進め、憲法に沿った法的な秩序を作ろうとしている私たちの社会を根底から崩して行ってしまうものであることに気づかされます。これらの問題は、法律ではなくとも、慣行や先例に支えられてきたものでもあります。どれも「議会制民主主義」の基本にかかわる問題です。
 何があっても、「問題ない」「そのような批判は当たらない」と、居直り、頬被りして、やり過ごそうとする政権の姿勢で済まされる問題ではありません。
 問題は単なる「床屋論議」に終わらせるのではなく、事実は事実としてきちんと記録し、何が問題なのか、ひとつひとつ明らかにしていかなければいけないのではないか。私たち、編集委員会では、それこそ「法と民主主義」の課題ではないか、と議論しました。
 そこで、編集委員会としては、今国会の中で問題になった出来事、ニュース、事件について事実関係を報告し、こうした状況をどう見たらいいか、四人の方に分析していただくという方法を取りました。論考を寄せていただいたのは、「『政治の劣化』『行政の劣化』とは何か」を五十嵐仁・法政大学名誉教授、「公正中立な官僚を生み出すために必要なこと」を中野雅至・神戸学院大学教授、「背景にある政治資金問題」を上脇博之・神戸学院大学教授、そして、この状況を世界的な思想状況からみた、「ポストトゥルース時代と政治、情報とメディアと世論」を、吉原功・明治学院大学名誉教授のみなさんです。どの論考も、独自の視点からこれらの問題を考えています。
 国会の「劣化」、行政の「劣化」と言っても、そういう状況を作ってしまったのは、国民の責任です。政治も行政も、国民の水準以上のものを持つことはできません。
 安倍首相は、この秋の臨時国会から憲法改正論議を始めたいとしています。その議論の前提になるのが、「議会制民主主義」であることもまた自明の理です。
 この特集が政治と民主主義について、広く国民的な議論を巻き起こすきっかけになって行けば、編集委員会としては望外の喜びです。

「法と民主主義」編集委員会 丸山重威


時評●先制核攻撃の威嚇が強まるなかトランプ・北朝鮮・非戦非核を考えるか

(早稲田大学名誉教授)浦田賢治
 トランプ大統領は、選挙公約を実行すると称して「アメリカ製品を買え アメリカ人を雇え」と題する大統領令に署名した(今年4月18日)。他方、米国議会の下院は5月4日、エドワ―ド・ロイスが提案した朝鮮(DPRK)制裁を加重する法案を賛成419対反対1の投票で可決して、ただちに上院に送った。そこですばやく、ロシア当局者のトップが、この下院決議1644は、北朝鮮制裁を強化するが、それにとどまらず、ロシアの主権を侵害し、「戦争行為」にあたると主張した。
 では下院決議 1644は、なにを要求したのか。この法案は、昨年オバマ政権下で制定された北朝鮮制裁ならびに政策強化法を修正して大統領の権限を強めるものだ。つまり北朝鮮に関する特定の国連安全保障理事会決議に違反する、いかなる者に対しても米国当局が制裁を課すことを可能にすることである。国連安保理はこれまで、北朝鮮(DPRK)に関する決議履行のコントロールを米合衆国に要請したことはなかった。
 ロシアの批判者たちの目を引いたのは104条だった。法案のこの部分は、朝鮮半島をはるかに越えて――具体的には、中国、ロシア、シリアおよびイランの港だが――停泊港および主要空港について検査権限を米合衆国に与えると想定される20以上の目標を識別しているが、とりわけロシアに向けて赤旗を掲げているとみたのだ。ロシア議会は興奮して、米議会の行動は宣戦布告に等しい国際法違反だと指摘した。
 アメリカ帝国は国際法をつくるが、国際法には従わない、そうした特権的地位にある。この米国の例外主義という主張が、北朝鮮の核武装という事態を前にして現在改めて批判され、挑戦を受けている。下院決議 1644は、ロシアの食料輸出と中国の貿易の息の根を止める面がある。この狙いを実現する方策として、北朝鮮の核武装が口実にされている。いわく。北朝鮮は、現在、6週あるいは7週ごとにひとつの核爆弾をつくる能力をもっている。このもっともらしい主張は、匿名の専門家たちの研究や非公開の情報・諜報(intelligence)報告だけで基礎付けられている。しかもそれはブッシュ政権によるイラク攻撃の正当化理由が実は大統領や副大統領らによる情報操作だったといった、つい先頃体験した歴史の実例が示しているように、さしあたって検証不可能である。
 アメリカによる先制核攻撃の切迫性をロシア軍部は自覚している。ロシア軍参謀本部のヴィクトル・ポズニヒル少将の報告はその一例である。ワシントンは世界覇権の確立を追求している。ワシントンは、アメリカの先制攻撃に対するロシアによる核反撃を防ぐことができる弾道弾迎撃ミサイル・システムを導入しつつある。要するにワシントンは核戦争を仕掛ける準備をしていると結論づけた。
 核保有5カ国(P5)とくにアメリカ帝国は、国連の核兵器禁止条約締結に背を向けて核軍拡をすすめている。来年度の核兵器予算を1割余り増額する。トランプは、NATO「各国の防衛費を国内総生産(GDP)比で2%以上にする」目標の早期実現を求めた。核政策でのダブルスタンダードは目に余る。核保有するイスラエルを軍事援助し、NPTに加入せず核開発を進めるインドとパキスタンを容認しながら、核実験に及んだ北朝鮮には国連安保理も使って制裁を加えている。他方で、偶発的核戦争を防止するため警戒態勢を解除する措置をとることに、アメリカの「核の傘」信奉国(ドイツ・日本など)は反対したという事実もある。
 もし「核抑止」というレトリックが破綻して、北朝鮮核基地めがけた米軍の爆撃がなされたら、どうなるか。複雑なシナリオが語られている。だが韓国のソウルは勿論、沖縄米軍基地から日本列島原発地域に及んで軍事的な被害をうけるだろう。やがてそれは非人道的な破局を生み、人類の絶滅をもたらす事態に及びかねない。
 端的に言えば、非戦・非同盟・非核の国づくりこそ、日本国憲法の精神が示している道だ。そのための社会革命思想を練り上げる必要がある。翻って、ラッセル=アインシュタイン宣言からストックホルム宣言へ、さらに核時代の端緒に立ち戻る考察が必要かもしれない。


ひろば●共謀罪・内閣支持率・新理事長・九条改憲など

 暑中お見舞い申し上げます。
 情勢があまりにあわただしくて、ついこの前のことがすぐに「古く」なってしまいそうな今日この頃です。
 国会の会期末6月18日を目前にした6月15日、法務委員会の採決を省略するという異常・違法な手続で共謀罪法案が成立してしまいました。
 法案が参議院に移ってから法務委員会の審議はたった4日。審議不十分の上、政府の説明はボロボロ、国民の反対の声はますます大きくなっており、本来廃案にならなければおかしい状況でした。
 通常であれば与党は会期を延長して採決するところ、加計学園疑惑の追及を逃れるため1日も早く国会を閉じたいとの一念で国会法56条の3の「中間報告」という奇策を使ったわけです。
 ところが加計学園疑惑と共謀罪の強引な採決で6月17?18日世論調査の内閣支持率は軒並み急落。毎日では10ポイント下げて36%(不支持率44%で支持と不支持が逆転)という結果になりました。
 そして7月2日の東京都知事選で、自民党は議席を57から23に減らす歴史的惨敗。
 7月1?2日の世論調査では、朝日も支持38%不支持42%と、支持不支持が逆転。
共謀罪法案の廃止をめざした市民団体や「共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会」の会議では、敗北感はありません。
 運動が大きく広がった結果、あのような無様な手続で採決せざるを得ない状況にまで政府与党を追い込んだと意気軒昂です。
 まもなく共謀罪の廃止を求める署名運動が始まります。国連特別報告者カナタチ氏が提起した警察を監視する第三者機関を作れという運動も始めよういう議論も出て、すでに何度も集会が開かれています。
こうした情勢の下、都知事選の6日後の7月8日?、日民協第56回定時総会が開催されました。
 総会で強調されたのは、5月3日の安倍首相の「憲法9条1項2項をそのままに、3項に自衛隊を明記する新憲法を2020年に施行する」との発言とその具体的なタイムスケジュールです。
 2020年施行ならば2019年公布。とすると2018年の通常国会で改憲を発議し、同年中に総選挙と同時に国民投票。衆参3分の2の議席があるうちにというわけです。
 2018年って来年ではないですか。
 うかうかしていると、来年の日民協定時総会は改憲発議後?!
 このぞっとする、しかし現実味あるスケジュールを頭に叩き込んで、大切な憲法9条を守らなくてはと決意を固めました。
今年の総会では、森英樹先生が理事長を退任され、新たに右崎正博先生が理事長に就任されました。
 森前理事長には、ちょうど2014年7月の閣議決定の時から戦争法成立という大変な時期に、憲法学者としてきっちりご指導をいただき、本当にお世話になりました。
 そして右崎新理事長は、総会記念講演「暴走する安倍政権の改憲策動とどう闘うか」において、安倍首相の「9条3項加憲」案の詳細な批判を展開されました。講演録は法民8・9月合併号に掲載予定です。
 「9条3項加憲」論は、憲法を素直に読む者にとっては破綻もあらわなメチャクチャな案ですが、護憲派の分断を狙い平和憲法を無にするもので、軽視できません。
 右崎新理事長とともに、これが憲法9条を破壊するものなのだということを、知恵を絞って訴えていきたいと思います。
その後、読売の世論調査では支持36%、不支持52%。時事通信では支持29.9%、不支持48.4%と、ついに「危険水域」と言われる20%台に入りました。
 「こんな人たち」としては負けられませんね。
 憲法9条の正念場です。がんばりましょう。よろしくお願いいたします。

(事務局長 米倉洋子)