日本民主法律家協会

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法と民主主義

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法と民主主義2018年5月号【528号】(目次と記事)

特集★ウソとごまかしの政治を立て直す
◆特集にあたって………編集委員会・小沢隆一
◆公文書管理と国民の知る権利・民主主義………右崎正博
◆日報の情報公開と文民統制………布施祐仁
◆露呈した内閣人事局の問題性と公務員制度のあるべき姿………晴山一穂
◆裁量労働制拡大をめぐるデータ「捏造」問題………上西充子
◆前川氏講演への政治と行政の介入の問題性………寺川史朗
◆森友学園公文書の「廃棄」虚偽答弁及び改ざん事件………上脇博之
◆公文書管理法の現状と問題点………三木由希子


特別寄稿●福島第一原発事故にともなう避難住民に「二重の地位」を──日本学術会議の提言──………小森田秋夫
司法をめぐる動き・辺野古新基地建設事業に係る岩礁破砕等行為の差止請求──那覇地裁が却下判決………前田定孝
司法をめぐる動き・4月の動き………司法制度委員会
メディアウオッチ2018●《憲法の原点と政治》この日本をどうするのか……改憲にかまける首相、求められる言論………丸山重威
あなたとランチを〈№36〉………ランチメイト・半田久之先生×佐藤むつみ
改憲動向レポート〈№4〉憲法に自衛隊を明記することが「自民党の責任」と主張する安倍首相………飯島滋明
インフォメーション
時評●今こそ、安倍政治を終わらせるとき………南 典男
ひろば●北東アジアの平和と安定をめざして──毎日闘い続ける韓国の人びと──………吉田博徳


ウソとごまかしの政治を立て直す

◆特集にあたって
 一体いつからこんなことになってしまったのか!そうつぶやきたくなるような政治の情景が眼前に展開している。
 公文書を改ざん、偽造、隠ぺいする。あるのに「ない」、「廃棄した」と言う。それらが発覚しても、言を左右にして調査しない。あるいは悪びれずに「どこが問題か」と開き直る。調査を始めたかと思えば、報告を遅らせ、時機を逸した(「ほとぼりがさめた」と思われる)頃にようやく提出する。このような対応のテーマとして、本号でとりあげるもののほかに、現在では「セクハラ問題」までが加わっている(次号特集「性の尊厳をとりもどそう」で取り上げる。乞うご期待!)。こうした「ウソとごまかしの政治」を、多くの政治家と行政(自衛隊も含む)のあらゆる部門が「結託して」行っているような、そんな様相を呈している。
 しかし、ただ嘆息ばかりしていてはならない。「ウソとごまかしの政治」の根源を洗い出し、この政治を、良識ある多くの人々との協力・共同をもって立て直すことは、「法と民主主義」を掲げる雑誌の使命である。本特集の志は、そこにある。

●「ウソとごまかし」の根底にあるもの
 政治における「ウソとごまかし」は、古代ギリシャ・ローマ、エジプトや中国の王朝、中世・近世のヨーロッパの王家、近現代の資本主義や社会主義の政治体制などなど、まさしく古今東西で繰り広げられてきたものである。汗牛充棟、げんなりするような実例が積み上げられる。それどころか、身近な家庭内や親族間のトラブル、学校(大学の部活も含まれる)でのいじめなどにも「ウソとごまかし」は往々にして存在する。
 それでも私たちは、「ウソとごまかしの政治はダメだ」と言う、言わねばならない。それはなぜか、なぜそう言えるのか。それは、国民主権、民主主義という大切な原理が、今日では厳然としてあり、かつ私たちはそれを大切にしなければならないからである。日本国憲法は、国民主権の原理に基づいて、公務員について「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と規定している(一五条二項)。この規定の持つ意味は深くかつ大きい。
 ところが、戦後の日本において、この公務員の「全体の奉仕者」性は、歪んでとらえられ、あるいはぞんざいに扱われてきた。
 まず、この言葉は、公務員の労働基本権の制限、すなわち労働者性の否定の根拠として使われてきた。ほんらい労働基本権は、労働者が人間らしさ(人間の尊厳)を取り戻すために必須のものとしてかち取られてきたものである。ところが、戦後の日本は、労働者からその「労働者らしさ=人間らしさ」を奪い続けてきた。その「ツケ」は今、政府が「働き方改革」と称しながら長時間残業をむしろ拡大する制度改悪を強引に推し進めるという形で、ユーモアなしの正真正銘の「ブラック」な事態として現れている(本誌二・三月合併号の特集および本特集の上西論文参照のこと)。
 また、「全体の奉仕者」性によって排斥されているはずの「一部の奉仕者」という性格が跋扈(ばっこ)する状況が続いてきた。その象徴が、「政・官・財の癒着の構造」と呼ばれる戦後日本の政治の特徴である。政治家も官僚も、「財界」という主権者国民にとっては「一部」でしかない存在に奉仕するために活動し、「財界」はその見返りとして多額の政治献金を、場合によっては人材まで提供し、与党とその政治家は、実現すべき政策をロビイングする財界とそれと結託した官僚(行政組織)から調達して、法律を通すことを請け負い、官僚(官界)は、そういう与党と政治家に媚びながら(今風に言えば忖度そんたくしながら)仕事をする。そこには、政治も行政も「全体の奉仕者」たる矜持が自ずと腐食し、減退する仕掛けが散りばめられている(こうした問題状況については、本誌二〇一七年七月号特集「劣化する政治と行政」とくに中野雅至論文参照)。
 さらに、こうした構造に、大学や学術の世界、労働界、ジャーナリズムの世界もまったく無関係ではないことに注意をしておかねばならない。その意味において、例えば軍事研究への大学の取り込み策動に対しては、細心の警戒心をもって対峙する必要がある。
 しかも、権力はしぶとい。以上のような「政・官・財の癒着の構造」は、一九九〇年代の「政治改革」、二〇〇〇年代になってからの「公務員制度改革」を通じて、改革の対象(やり玉)として掲げられ続けてきたものである。二〇〇九年の公文書管理法制定や二〇一四年の国家公務員法改正などはその「帰結」でもある。ところが、巻頭の右崎論文が論じ、三木論文が詳細に指摘するように、公文書管理法の立法の精神は換骨奪胎され、それが今日の事態を引き起こす一因になっているし、晴山論文が鋭く解明しているように、国公法改正によって設置された内閣人事局とそれによる幹部職員(高級官僚)の人事管理は、「森友・加計」問題のまさしく温床のような存在であることが判明してきた(森友問題についての上脇論文も参照)。こうした問題について、自らの行いの「反省」も込めて発言している前川喜平前文部科学事務次官の講演に対する自民党政治家の介入は、「意趣返し」としての性質をもっていよう(寺川論文参照)。これらを通じて、「ウソとごまかしの政治」を立て直すには、制度の再改革が必要であることが浮き彫りになっている。

●政治を立て直す手がかりは何処
 「ウソとごまかしの政治」という問題の性格、特徴をその根源に迫りながらつかむと同時に、立て直す上での方向付けが是非とも必要である。ここまで問題を深刻化させた安倍政権の退陣は、国民に問題への自覚、改革への決意をうながす上でも不可欠(マスト)であるが、同時に指針が欲しい。そのヒントは、布施論文に潜んでいる。
 南スーダンPKO、イラク戦後処理に派遣された自衛隊の日報を、そのジャーナリスト魂を奮い立たせて追い求め続け、ついにその存在を明らかにさせた活動の詳細は、その好著『日報隠蔽』(三浦英之と共著・集英社・二〇一八年)に克明に記されている。本誌論文でも触れられているが、同書の次の言葉が編集子の眼に焼き付いて離れない。「今回の日報隠蔽事件のように、憲法九条とPKOの現実との矛盾を覆い隠すことで危険に晒されるのは、実際に現地で活動する自衛隊員である。…(中略)…この現実を、私たち国民は、主権者として知る責任がある」(前掲『日報隠蔽』二六一─三頁)。

「法と民主主義」編集委員会 小沢隆一


時評●今こそ、安倍政治を終わらせるとき

(弁護士)南 典男
 第2次安倍政権は、2012年12月26日に行われた衆議院議員総選挙で民主党が歴史的敗北をし、自民党が294議席を得て発足した。
 安倍政権の下で、2013年に特定秘密保護法が強行採決により成立し、市民に開示されるべき重要な国家情報が「秘密」とされ、開示されなくなった。
 2014年に閣議決定により、戦後70年間続いた専守防衛から集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更がなされた。
 2015年には集団的自衛権行使を認める安全保障関連法が強行採決により成立し、専守防衛の自衛隊から海外で武力行使のできる自衛隊に変わった。
 2017年には、委員会報告を省略するという異例の手続により共謀罪法が強行採決により成立し、刑法の大原則を覆して犯罪実行行為がなくても処罰できるようになり、市民の自由な活動が侵害される危険が高まった。
 そして、安倍首相は、2017年5月3日、憲法9条を改正し2020年までに施行すると表明し、今年の年頭記者会見では「今年こそ」と改憲実現に意欲を示し、今年3月25日に開かれた自民党大会では9条改憲を含む4項目について改憲を進めていく決定をした。
 第2次安倍政権は、わずか5年余の間に、国家権力の自由を拡大、個人の自由を著しく制限する違憲立法を矢継ぎ早に強行成立させ、恒久平和主義を否定する憲法9条改憲まで行おうとしている。安倍政治は、まさに憲法と立憲主義を破壊する政治である。

このように憲法を蹂躙してきた安倍政権の組織実態が、いま暴露されている。
 日本会議大阪代表籠池氏が理事長だった森友学園に根拠なく8億円もの減額をして国有地の払い下げを行い、その経緯を記した公文書を改ざんした。また、安倍首相自ら「腹心の友」と呼ぶ加計氏が理事長だった加計学園の獣医学部の設置を首相案件として認可した。
 さらに、陸上自衛隊の南スーダン、イラクでの戦闘状況の日報についても大量の文書が隠蔽されていた。
 安倍首相の取り巻きを優遇し、都合の悪い文書を改ざんするなど、公権力を私物化する安倍政権の独裁政治の実態が明らかにされつつある。

安倍政権は、これまでの自民党政治と違った特異な性格を持っている。安倍首相は、そもそも「戦後レジームからの脱却」を標榜し、戦後の憲法体制を壊すことを目標にしてきた。安倍首相の著書『新しい国へ』の中で、交戦権否認条項(憲法9条2項)について「わが国の安全保障と憲法との乖離を解釈でしのぐのは、もはや限界にある」として憲法9条2項削除を求めている。憲法9条2項を維持する安倍9条改憲案の発信元は、日本会議の伊藤哲夫氏である。同氏は、「問題は9条2項にあり、現在の2項を削除……するのが最もストレートな解決方法だと言えます」と本音を述べている。
 安倍政権は改憲自体を目的としこれに執着する独裁的な政権であり、極右の日本会議と繋がっている。安倍政治を終わらせない限り改憲の動きはなくならないし、改憲の動きを阻めば安倍政治は終わりを迎える。
 今、世論調査では安倍政権への不支持が支持を大きく超えており、安倍政治を終わらせる好機である。しかし、安倍政権への支持は30%をなかなか割り込まない。法律では改憲原案の作成について何ら手続が定められておらず、自民党と公明党の合意さえできれば現在開かれている通常国会の会期中に改憲原案を提出することも可能である。改憲を阻むには油断することなく更なる努力が必要だ。
 安倍政治を終わらせることと改憲を許さないことが同義であることを肝に銘じ、もう一歩踏み込んだ市民運動を展開しよう。安倍9条改憲反対の3000万人、即ち昨年総選挙の有効投票総数の過半数を超える署名を達成しよう。そうすれば国民投票で改憲案が否定される可能性を示し、国会での発議そのものをさせないようにできる。今こそ、改憲を阻み、安倍政治を終わらせるときである。
(みなみ のりお)


ひろば●北東アジアの平和と安定をめざして──毎日闘い続ける韓国の人びと──

 私は去る3月26日から30日までの、日本平和委員会主催の韓国ピース・ツアーに参加しました。5つの平和運動団体との交流が主な目的で、旅行先は済州島、大邱、陜川、星州、釜山などでしたが、全部をお知らせできませんので、済州島の江汀(カンジョン)村と星州に関連する金泉の経験だけをお知らせします。
 済州島の南側西帰浦市のなかの江汀村では、十数年前から海軍の軍港を作ることに反対する住民運動がありました。2008年に私たちは江汀村を訪れ、村長の姜さんと会い闘いを激励するとともに、「私たちは徹底的に非武装で勝つまで闘い続けます」との言葉を聞き、感動したことがありました。
 韓国政府の強行方針で軍港は2016年に完成し、昨年から使用されていましたから、さぞかし運動は停滞しているものと思っていたのです。ところが予想以上に元気に闘い続けていることに驚きました。
 村人たちは毎日月曜日から土曜日まで、軍港正門から百米位の横断歩道の上に午前11時頃、数十名が集まって、旗をたてながら歌を唱ったり踊ったりして、「戦争反対」「軍港なくせ」などのシュプレヒコールをし、一列になって軍港正門まで行き元の場所まで帰るデモを続け、みなで昼食をし話しあって午後1時頃解散しているそうです。「私たちは自分のために闘っているのではありません。子どもや孫たちに戦争の悲劇をもたらせないためです」との言葉に、感動させられました。
 江汀村の軍港周辺には軍港反対のスローガンが多くはり出されていましたが、そのなかに逮捕700人、起訴587人、拘束60人、罰金4億ウォン、損害賠償請求34億5000万ウォンの看板がありました。1000人余りの小さな村にかけられた弾圧と闘いの結果です。損害賠償請求というのは村民の反対運動のために、工事の進行が遅れた損害を政府が村民に請求したものだそうです。生命と生活を守ることは基本的人権ですから、不当な請求であることは当然です。ここにも朴槿恵政権の本質が表れているように思いました。村民たちは1ウォンも払っていないそうです。
 慶尚北道星州郡のサード(高高度ミサイル迎撃装置)設置反対闘争の激励は、昨年も行きましたので現地の人びとからは大変喜ばれました。星州はチャメ(まくわうりのこと)の産地なので、私が参加者の夕食に提供しようと10個注文したら、現物がないとの返事でした。すると横で聞いていた50才位のおばさんが、「私があげます」と言って電話で1箱持ってこさせました。チャメ農家のおばさんでした。ここにも平和運動への連帯が感じられて嬉しくなりました。
 星州の隣りの金泉駅前の夜の集会にも参加しました。金泉市でもサード設置反対の運動が続いているのです。金泉駅前の広場に恒久的な舞台が作られていて、毎晩7時半から100人余りの人びとが集って、抗議の集会を開いており、当日は558日目だとのことでした。朴政権時代から続いているのです。
 はじめに小学生らしい5人の踊りがあり、みんなで労働歌の合唱等のあと、私たちが壇上に登り闘いを激励する挨拶を交換した後、バスのなかで練習してきた、「サードは行け!平和よ来い!」「共に未来を切り開こう!」などの、韓国語のシュプレヒコールをすると、金泉の皆さんも共に叫び、3つの太鼓まで加わって賑やかな叫びになりました。そして次々と自由に発言するのです。韓国の人びとは小さな町でも毎日闘い続けている姿を見て、私たちも学ばなければならないと強く感ずる旅でした。
 4月27日歴史的な南北首脳会談が行われて、「板門店宣言」が発表されました。昨年の戦争前夜のような情勢から一転して、非核平和の朝鮮半島を作る情勢が生まれています。私たちは北東アジアの平和と安定を築くために、全力をあげなければならないと思っています。

(全司法OB 吉田博徳)