2021年11月19日
改憲問題対策法律家6団体連絡会
社会文化法律センター 共同代表理事 海渡 雄一
自由法曹団 団長 吉田 健一
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 上野 格
日本国際法律家協会 会長 大熊 政一
日本反核法律家協会 会長 大久保賢一
日本民主法律家協会 理事長 新倉 修
本年10月31日投開票の衆議院総選挙は、自民党が絶対安定多数の261議席を獲得し、立憲民主、共産両党はともに議席減となり、自民・公明に維新を加えた改憲推進勢力の議席が、3分の2を超える結果となった。
メディアは、野党共闘不発と論じ、連合の芳野友子会長は、共産党との候補者調整を見直すよう立憲民主党執行部に注文したと報道されている。しかし、市民連合の共通政策を基礎に候補者一本化が全国289小選挙区のうち214小選挙区で成立し、62小選挙区で野党共闘候補が勝利したほか、31小選挙区で1万票以内の接戦に持ち込んだ。野党が候補者を一本化できなかった72小選挙区では、野党は6小選挙区の勝利にとどまることからも、野党共闘が一定の成果を上げたことは疑いがないことを確認する必要がある。現在の選挙制度を前提とする限り、与党に対抗するためには、立憲野党が共闘する以外に道がないことは明らかである。
立憲野党は、接戦区で勝ちきれなかったこと、市民連合との「共通政策」が有権者に浸透しきれなかったこと、投票率が55.93%にとどまったことや、比例区の共闘のあり方など、今回の選挙結果を真摯に総括すべきである。そして、来年の参議院選挙に向けて、速やかに32の1人区での候補者一本化を図り、野党共闘を発展させ強化することが緊急に求められている。
自民党は、選挙公約で日本国憲法の改正をあげ、岸田文雄首相は、「敵基地攻撃能力」など防衛力の強化を図り、「任期中に改憲のメドを付けたい」と言明している。維新の松井一郎代表は、総選挙後、「来年参院選と同日に改憲国民投票を」と踏み込み、与党、維新ら改憲勢力は、臨時国会における憲法審査会での改憲案討議入りを数の力で押し切ろうとしている。改憲派は、自民党4項目改憲案をもとに、とりわけ、コロナ対策を理由とする緊急事態条項の創設と中国に武力で対抗するための9条改憲を狙っている。
しかし、コロナ対策のために改憲をする必要は全くない。また、米中の緊張関係が高まる中、日本が行うべきは、「敵基地攻撃能力」を高めることでも、アメリカと一体となって中国を武力によって威嚇することでもなく、ましてや9条の改憲でもない。憲法の平和主義の理念に基づき、国際世論をリードして戦争の危険性を回避するため、あらゆる政治的な努力をすることが最優先されるべきである。いま必要なのは「憲法の改正」ではなく、立憲主義の本義に立ち返り、権力に憲法を遵守させて、憲法に基づく政治を実践させることである。
私たち改憲問題対策法律家6団体連絡会は、これまでも自民党4項目改憲案に強く反対し、立憲主義・平和主義に反する「安保法制」などの法律の廃止を求めてきた。来年の参議院選挙が終わると2025年までは国政選挙がない可能性がある。憲法と平和の危機に直面する今、私たち法律家は、あらためて命と平和と民主主義を守る憲法に基づく政治への転換を強く求め、その実現のために、来年の参議院選挙に向けて市民と野党の共闘を一層広げかつ強化するよう強く後押しをし、奮闘することを誓う。
以上