2021年12月15日
日本民主法律家協会
理事長 新倉 修
事務局長 大山 勇一
1 私たち日本民主法律家協会は、1961年に憲法と平和を愛する法律家により結成された団体です。
2 私たちは、政府の行為によってふたたび戦争の惨禍を味わうことのないことを決意した日本国憲法をもつ国民として、日本における米軍基地の4分の3が集中し、沖縄県本島の4分の1以上を占拠されている沖縄の「痛み」を全身の「痛み」として受け止め、絶滅危惧種のジュゴンを育む「美ら海(ちゅらうみ)」を死滅させる辺野古への米軍基地の新設に絶対反対し、基地建設につながるあらゆる行為、とりわけ日本国政府による違法・無法な行為の即時停止を求めてきました。
上記の米軍基地の新設に関して、国が公有水面埋立法に基づき申請していた「普天間基地代替施設建設事業に係る埋立地用途変更・設計概要変更承認申請」について、2021年11月25日付にて沖縄県知事が不承認の決定をしたこと(以下「本件不承認決定」という)を高く評価し、これを全面的に支持することを表明します。
3 本件不承認決定に関しては、沖縄県のホームページに関連情報(普天間飛行場代替施設建設事業公有水面埋立変更承認申請の処分について)が掲載されています。この処分通知書の記述は、委曲を尽くしており、法律論として合理的であり、憲法の平和主義、人権尊重、地方自治の本義に照らして見ても、まことに已むにやまれない理由に基づくものとして評価することができます。
さらにマスコミ報道によれば、本件埋立て申請にかかる辺野古沿岸に、埋め立てが始まる3年前の2015年の段階で、地質調査をして業者から地盤に問題があるという報告がすでに防衛省沖縄防衛局に行われていたことが明らかになりました(共同通信11月28日付)。このような情報隠しとも言うべき不誠実な態度を国側がとってきたことも、私たちが沖縄県知事の決定を評価するにあたって、重視せざるを得ないことです。
4 そもそも、世界一危険と言われる米軍普天間基地の日本への全面返還を日米両政府が合意して25年もの歳月が過ぎたにもかかわらず、同基地はいまだに返還されていません。その間、普天間基地周辺の住民は、騒音被害や落下物の恐怖に怯えながらの生活を余儀なくされています。政府は、普天間基地返還のためには辺野古基地建設のみが「唯一の解決策」だと強弁していますが、このように普天間基地返還を「人質」にして辺野古新基地建設を強行しようとする政府の姿勢を許すことはできません。
5 岸田文雄首相は、「国民の声を聞く」と約束しているのですから、沖縄県知事の本件不承認決定に現れた「声」を真摯に受け止め、辺野古での海上基地建設を放棄すべきです。
しかし、岸田内閣は、国民の声に全く背を向ける「対抗措置」をとりました。すなわち、本年12月7日、事業主体の防衛省沖縄防衛局は、沖縄県知事による本件不承認決定に対して、行政不服審査法に基づく審査請求を行ったのです。この審査請求は、本来、行政から不当な処分を受けた国民の救済を図るための制度ですが、沖縄防衛局はあたかも「私人」であると強弁して申し立てを行いました。この審査において判断を下すのは、防衛大臣とともに同じ内閣を構成する国土交通大臣です。閣内で意見の一致が求められることからすると、このような審査請求が行われれば、国土交通大臣は沖縄防衛局の訴えを認めることになり、沖縄県知事の不承認決定が取り消されることは目に見えています。このような脱法行為を決して許すことはできません。
6 私たち日本民主法律家協会は、防衛省沖縄防衛局が本件不承認決定に対して審査請求を行ったことに対して強く抗議し、日本政府に対して辺野古での海上基地建設を放棄するよう求めます。
あわせて、日米両政府に対して、ただちに普天間基地の無条件全面返還を実現するよう求めます。
以上