2021年12月15日
日本民主法律家協会
理事長 新倉 修
事務局長 大山 勇一
1 昨年10月1日、菅義偉前首相は、第25期・第26期の日本学術会議の会員任命に関して、推薦された会員候補105名の科学者のうち、6名の候補者の任命について、理由も明らかにしないまま拒否し、今日に至るまで6名の任命は実現していない。
2 日本学術会議は、日本における「科学者コミュニティの代表」ともいうべき枢要な機関であり、国際連合憲章やユネスコ憲章にも明らかなように、戦争や貧困が無知や誤解から生じるうることを踏まえて、学術の振興に努め、人類共通の文化を育てるために学術の国際的な交流と振興を目指す独立した学術機関である。その組織と役割を定める日本学術会議法の基本は、日本学術会議が210人の会員と2000人を超える連携会員によって組織され、国の予算によって活動を保障され、なおかつ学術団体として憲法に保障する「学問の自由」を享受するため、政府から独立の機関とされている点にある。
したがって、菅前首相が法律の定める手続きによる日本学術会議の推薦する会員候補リストを見ることもなく、6名の候補者について任命手続を怠ったことは、重大な違法状態を作り出したことに他ならない。
3 岸田文雄首相は、憲法の手続きに従って二度にわたって首班指名を受けており、憲法を遵守し内閣を統轄する責任を負い、国政において万全を期すべき責任を負うことを国民及び憲法に誓約するべき地位にある。ところが、岸田首相は、「任命権者である当時の首相が最終判断したものだ。一連の手続きは終了したものだと承知している」と述べ(本年10月11日)、任命手続きは任命権者の行為によって完了しており、自分は関与しえないという見解に固執して、6名の候補者の任命を拒否する姿勢を続けている。
しかし、日本学術会議の総会決議に基づく声明(本年4月22日)にも明らかなように、法律に定める定員が任命権者の不作為によって充足されない状態の解消が直ちに求められている以上、これを放置することは、岸田首相自体が適正な権限を行使しないという不作為によって国法上の重大な違法を侵すことにほかならない。
4 日本学術会議は、要望書の採択や総会での声明発出などにおいて、一貫して6名の会員候補者の即時任命を求めるとともに、任命しなかった理由の説明を求めてきた。そのうえで、本年12月3日に開催された総会において、岸田首相に対して会員任命問題を含む様々な課題について率直な意見交換の機会を設けるよう求める要望書を採択した。
しかし、いまだ岸田首相は意見交換に応じる姿勢すら示していない。
5 日本民主法律家協会は、昨年10月1日の任命拒否の事態に対して、同月6日、推薦された会員候補者が任命されなかった前例はなく、前代未聞の暴挙であるとして強く非難する抗議声明を発出した。このたび、新首相が選出され、日本学術会議により要望書が提出されたことを踏まえ、あらためて、岸田首相に対して、任命拒否された6名の候補者を直ちに任命し、法律上の定員不足という違法状態を解消するよう、強く求める。
以上