1 この1年間、新型コロナのパンデミックだけでなく、私たちの生活は翻弄されてきた。
国民を無視して、菅義偉から岸田文雄へ与党内での政権のタライ回しが行われ、市民と立憲野党との共闘は前進したものの、一票の格差の抜本的な解決は見送られ、高い供託金と厳しい選挙運動規制のもとで、昨年の衆議院総選挙で全面的な勝利は実現しなかった。異常な野党共闘バッシングに続き、本年2月10日以降の衆議院憲法審査会の毎週開催がかえって国会審議の空洞化を促進し、国民生活に必要な経済対策や医療・福祉がなおざりにされた。
また、米中間の緊張関係の高まりやロシアによるウクライナ侵略の影響もあって、軍備拡大や日米を軸とする軍事同盟体制が強化されつつある。とりわけ、「敵基地攻撃能力保有」や「核共有」などが議論され、防衛費のGDP比2%への大幅増額が提案される事態は、従前の防衛政策の急激な右旋回ともいうべき状況にある。
こうした実質改憲の動きに加えて、自民党や日本維新の会は、ウクライナ侵略の平和的解決に逆行して、自衛隊明記や緊急事態条項の創設などを内容とする明文改憲を早期に実現しようと画策している。本年5月には、学問の自由や大学の自治すらも脅かす経済安保法を成立させたことも見過ごすことはできない。
一方で、参議院選挙では立憲野党の議席数は後退しており、平和憲法と民主主義は危機に瀕している。
2 7月8日、安倍晋三元首相が銃殺されるという事件が起きた。その背景には、反社会的なカルトである世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が、霊感商法などの違法・不当な手段を通じて普通の市民の生活基盤を根こそぎ破壊し、多数の被害者を出してきたことがある。事件後、安倍元首相をはじめ多くの自民党議員が旧統一教会のイベントに参加したり、選挙運動や集票で同教会会員の協力を受けてきたりしたことが明らかになった。また、旧統一教会の政治部門である(あるいは旧統一教会系の)国際勝共連合の主張と自民党改憲草案(2012年)が瓜二つであることや、性別役割分担を前提とする「家庭の価値」を説く旧統一教会と選択的夫婦別姓制の採用やLGBTQの権利擁護に反対する自民党の政策との関係性が指摘されている。このようなカルト集団と議員・政党が親密な関係を持つことは決して許されるものではない。
岸田文雄首相は、このような社会的背景や安倍氏自身の関与についてすべて蓋をして、法的な根拠もあやふやなまま、もっぱら自らと政権の利益のため、多額の国費を投入する「国葬」を閣議決定した。この決定には、多くの国民が、すでに疑問を呈している。
3 私たち日本民主法律家協会は、日本国憲法を活かし、平和・人権・民主主義と司法の民主化を実現することをめざし活動してきた。カルト集団と自民党などの政党との癒着が露見しつつある中で、与党の提唱する改憲・軍拡という「暗い道」が、平和・人権・民主主義の「輝かしい道」と相容れないものであることは明らかである。
私たちは、カルトに汚染され、国民生活を守る堅実な経済政策を回避し、改憲・軍拡を推し進める自公政権を打倒し、平和・人権・民主主義に基づく「新しい明るい日本社会」を実現するために、全力で取り組むことを誓う。
以上
2022年8月7日 日本民主法律家協会第61回定時総会