日本民主法律家協会

袴田巌さんの無罪判決を歓迎し、検察官に控訴権を放棄することを求め、併せて死刑制度のあり方を糺す

2024年10月7日
日本民主法律家協会

 

 私たち、日本民主法律家協会は、平和が実現され人権が尊重される社会をめざす法律家・法律関係者の団体です。

 私たちは、2024年9月26日に静岡地方裁判所が、死刑確定判決を見直して、袴田巌さんに無罪判決を言渡し、再審請求人である袴田秀子さんに謝罪したことを心から歓迎します。なかでも56年前の一審有罪判決において見逃された捜査機関による3つの証拠捏造を咎め、糺したことを高く評価します。

 袴田さんは、命を奪われず幸いにも「死刑台からの生還」を果たしましたが、長期間にわたって死刑確定者として収容される中で、精神的にも肉体的にも重大なダメージを受けました。このことは、国連の被拘禁者処遇最低基準規則(ネルソン・マンデラ・ルールズ)に照らしても深刻な問題を投げかけており、私たちはこの点を見逃すことはできません。
 死刑確定者の処遇に問題があることは、死刑そのものの残虐性・非人道性・品位毀損性の問題とも相まって、人権の尊重と死刑制度とがもはや両立しえない状態にあることを端的に示しています。
 加えて、この非人道的な刑罰の選択が、合議による裁判体の全員一致ではなく、多数決による制度であること(裁判所法第77条第1項)にも大きな問題があります。アメリカでは、死刑事件についてはとりわけ手厚い人権保護手続き(スーパー・デュプロセス)が取られていることと比べても、日本の死刑事件手続きに大きな欠陥があることは、歴然としています。

 私たちは、袴田巌さんをただちに精神的・肉体的な重圧から解放させるため、検察官が控訴権を放棄することを求めるともに、この無罪判決を大きな教訓として、刑事裁判の無謬性の神話に根差した再審法を抜本的に改正することを求め、さらに残虐で非人道的かつ品位を損なう死刑制度を廃止することを求めます。

以上