日本民主法律家協会

【法律家6団体会員並びに全国で奮闘中の市民連合に向けたアピール】
ストップ!「9条改憲と大軍拡政策」 ― 市民と立憲野党の共闘を各地で力強く進めよう

2024年10月11日

改憲問題対策法律家6団体連絡会
社会文化法律センター 共同代表理事 海渡 雄一
自由法曹団 団長 岩田研二郎
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 笹山 尚人
日本国際法律家協会 会長 大熊 政一
日本反核法律家協会 会長 大久保賢一
日本民主法律家協会 理事長 新倉  修

 

1 国民を裏切る石破首相の所信表明

 2024年10月1日、石破茂氏が、衆参両院本会議で首相に選出され、10月4日、所信表明演説を行った。その内容は、岸田政権の安全保障政策を称賛し大軍拡政策を引き継ぐ意思を表し、憲法改正については「総理在任中に発議実現」と表明し、他方、裏金・統一教会問題の再調査には触れず、自民総裁選でアピールしていた夫婦別姓制度の導入にまったく全く触れないなど、国民を裏切る内容に終始した。

 

2 憲法改正に本気で取り組む政権

 岸田前首相は、自民党総裁選への不出馬を表明した際、自衛隊の明記と緊急事態条項について条文の形で詰めて論点整理をして発議までもっていかなければならないと述べた。この表明を受け、2024年9月2日、自民党改憲実現本部は、①憲法9条1項、2項の次に9条の2を加え、「前項の規定は・・・必要な自衛の措置をとることを妨げず」とし、「そのための実力組織として、・・・内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」、②緊急事態条項を明記し、国会議員の任期延長の特例規定とともに、「国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特段の事情があるときは、内閣は、・・・政令を制定することができる」とのたたき台素案を条文の形で詰めて論点整理をし、「速やかな憲法改正原案の起草・国会提出につなげていくべきである。」とまとめた。
 石破首相は、そもそも「9条2項の削除」と国防軍の保持を持論としており、首相在任中に、9条と緊急事態条項の改憲発議を本気で進めてくると考えておかなければならない。

 

3 大軍拡を一層進め、フルスペックの集団的自衛権とアジア版NATO目指す政権

 岸田前首相は、2022年12月16日、敵基地攻撃能力の保有を明記する安全保障関連三文書の改定を閣議決定し、5年間で43兆円もの軍事費をつぎ込む大軍拡路線を進め、日米首脳会談から2プラス2(外交軍事閣僚による日米安全保障協議委員会)を経て、米軍と自衛隊の指揮系統の一体化と敵基地攻撃能力に核兵器を含めること(拡大核抑止)を合意した。
 石破首相は、こうした岸田政権の大軍拡路線を引き継ぐとともに、米軍との核兵器の共有やアジア版NATOつまり多国間軍事同盟の形成と集団的自衛権の全面行使に言及しており、さらなる大軍拡を進めて戦争を引き起こす可能性がある。
 石破政権は、安倍政権を超えて大軍拡路線を加速して進めた岸田政権の政策を引き継ぐだけでなく、岸田政権を超えて核を含めた大軍拡や多国間軍事ブロック化と9条及び緊急事態条項の明文改憲を本格的に進める政権である。

 

4 石破政権の9条・緊急事態条項改憲と大軍拡政策を許してはならない

 石破首相は、10月9日、衆議院を解散し、15日公示、27日投開票の日程で総選挙を行うこととした。この解散・総選挙は、さらなる大軍拡・改憲により戦争への道を突き進んでいくのか、歪んだ政治を正し、戦争への道をストップさせ、疲弊した国民生活を回復させるのかが問われる真に重大な選挙である。
 裏金問題・統一教会問題や疲弊した国民生活の中で、国民の自民党政治に対する不信と不満は大きい。石破政権に対峙して新たな政治を展望するには、市民と立憲野党が共闘し、国民の不信と不満を真摯に受け止めて選挙に勝利するほかはない。市民と立憲野党が大同団結して選挙共闘を展開すれば、政権交代も可能である。少なくとも立憲野党の国会議員が3分の1を超えれば、9条・緊急事態条項改憲への道を防ぐことはできる。
 市民連合は、立憲民主党、共産党、社会民主党及び沖縄の風との間で、市民連合が立憲主義の回復と安保法制の廃止を求めて、立憲野党と連携しながら、5回の国政選挙を闘ってきたことを踏まえ、軍拡を許さず、憲法9条の改悪や専守防衛を逸脱する集団的自衛権の行使・敵基地攻撃能力の保有を容認しないことなどを内容とする政策及び選挙協力の合意をした。
 来るべき総選挙で、市民連合と立憲野党各党の合意を踏まえて立憲野党と市民との共闘を各地で力強く進め、9条・緊急事態条項改憲と大軍拡政策にストップをかけ、新しい政治を展望しよう。

 

以上