日本民主法律家協会

「私たちはどう生きるか」―共に考え、共に行動しよう

 

 日本民主法律家協会の活動に参加する私たちは、第62回定時総会での報告と討論を通じて、この1年間における岸田政権(自由民主党・公明党連立政権)の行動を点検し、次のように呼びかける。

 

1 岸田政権は立憲主義・民主主義・平和主義・人権擁護を掘り崩す
(1)立憲主義・民主主義違反
 岸田政権は、立憲主義・民主主義を空洞化させている。すなわち重要案件は国会閉会中に閣議決定され、国会は拙速な議事日程で承認印(ラバースタンプ)を押すという状況が顕著になっている。昨年末の安保三文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)の改訂にとどまらず、原子力発電の再稼働や稼働期間の根拠の不確かな延長を含むGX(グリーン・トランスフォーメーション)政策でも同じ問題を生じさせている。また、福島第一原発事故に関連する「汚染水」の海洋放出でも、科学的根拠の検証や関係者に対する「丁寧な説明」の欠如が指摘されている。さらに、岸田政権は、菅政権の違憲・違法な日本学術会議推薦の会員候補者任命拒否問題を放置するだけではなく、日本学術会議の独立性を脅かす組織改編・人事制度の導入を相変わらず追求している。
(2)平和主義違反
 また、岸田政権は、平和主義をも掘り崩している。憲法9条をはじめとする明文改憲の策動とともに、「台湾有事」や「北朝鮮のミサイル発射」、ロシアのウクライナ侵略を口実とする、大幅な軍備拡大と敵基地攻撃能力(反撃能力)の強化など実質改憲も推し進めている。とくに、米国製巡航ミサイル「トマホーク」500発を含む兵器の「爆買い」や軍事費のGDP2%(NATO水準)規模への拡大は、米国からの強い要請に基づくことが明らかになっており、日本の財政構造を破綻させかねないものとなっている。さらに、南西諸島防衛を口実として、住民の意思や意向を無視して、石垣島や宮古島及びその周辺地域では軍事施設が増強ないし新設され、米軍と自衛隊さらには海上保安庁との共同演習も繰り返されている。こうした軍備拡大と米軍との一体化は、東アジアにおける緊張を高め、日本の平和主義を根底から覆すものとなっている。くわえて、今年5月には被爆地広島にてG7サミットが開催されたにもかかわらず、岸田首相は、核兵器禁止条約への言及すらしないばかりか「核抑止」論に立つことを宣言するなど、被爆者をはじめとする核兵器廃絶を願う市民の思いを愚弄している。
(3)人権擁護違反
 さらに、岸田政権は、人権擁護の観点からも重大な過ちを犯している。「異次元の少子化対策」も、ジェンダー平等を目指す施策も、LGBTQS差別解消政策も、物価抑制策も、その施策や方針は不十分あるいは逆効果との疑いが拭えない。入管法の「改正」においては、国連機関からも指摘されている重大な欠陥を放置している。DX(デジタル・トランスフォメーション)に関連するマイナンバーへの国民情報の一元化は、いたずらに混乱を招き、個人情報の保護に欠けるばかりか、それに併せて強行されようとしている従来型の健康保険証の廃止は人々の命と健康を脅かすものであってただちに中止すべきである。また、国連人権理事会の普遍的な定期的審査や国際人権条約の履行審査に関わる諸委員会による日本政府報告に対する最終所見でも、国内人権機関の設置や国際人権機関への個人通報を認める法制度の整備の停滞が問題視されている。さらには死刑制度においても、執行停止や死刑廃止条約の批准などに取り組むべきことが指摘されている。

 

2 市民と法律家の闘い
 こうした、立憲主義・民主主義・平和主義・人権擁護を掘り崩す政権の「悪政」については、市民と協力し、また立憲野党と連携して、厳しくこれと対峙し、正していく必要がある。これまで、私たちは、明文改憲・実質改憲と対決する場面において、改憲問題対策法律家6団体連絡会(社会文化センター、自由法曹団、青年法律家協会弁護士学者合同部会、日本国際法律家協会、日本反核法律家協会、日本民主法律家協会)の構成員として、およそ10年にわたって共同の取組みを継続してきた。この活動は、明文改憲やそのほかの悪法阻止において顕著な成果を上げてきただけでなく、明るい未来を切り開く有力な活動としてますます重要な役割を果たすようになってきている。

 

3 法律家は、立ち上がろう!
 私たちは、志を持つ多くの法律家、とりわけ若い法律家がさまざまな場面で、創造的な活動に取り組んでいることを知っている。裁判官や検察官だけではなく、裁判所で働く司法公務員や検察庁や刑事施設の職員においても、人権擁護の役割と立憲主義・民主主義の理念に照らして真剣に職務に従事していることを知っている。ところが、残念ながらこうした法律家や法律職、司法公務員及び市民が幅広く連帯して力を発揮しているという状況ではない。
 今夏、上映されているスタジオジブリの映画「君たちはどう生きるか」は、若者をはじめとする多くの市民に対し「どう生きるか」を問いかけている。それに伴い80年以上も前に出版された吉野源三郎の同タイトルの書籍も注目を浴びている。
 私たちも、この映画そして書籍のタイトルを借りるならば、あらためて「どう生きるか」について考え、自らの権利とともに日本に居住するすべての人の権利を守るために行動していく。そして、若者をはじめとする皆さんにも私たちと共に「どう生きるか」を考え、連帯するようアピールする。

 

以上

 

2023年8月5日
第62回日本民主法律家協会定時総会参加者一同