2005年09月07日

今も眠る、棄てられた毒ガス Q&A

Q&A:

Q: 731部隊とは?
A: 黒龍江省で、生きた中国人で人体実験を行っていた。化学兵器/細菌兵器を使用したりして、その影響を調査していた軍部。当時から国際法上違反であったのに、戦後の東京裁判でも裁かれていないのは、その調査結果が連合軍にとって有効なものであったため、アメリカがその調査結果を持っていった。それと引き換えに裁かないことを約束した。

Q: 日本人の被害者にはどのような補償をしているのか?
A: ほとんど何の補償もしていない。日本国内の遺棄状況の調査も今までに2回だけ。

Q: 化学兵器/細菌兵器は実際に戦争で使われたのか?
A: お金をかけて調査・開発したので、大量に使用していた。ペスト菌なども開発していた。広島や小倉で開発されていた。だから原爆投下のターゲットとされたのではないか、と言われている。

Q: 広島で開発されたのに、なぜ日本中に散らばっているの?
A: 終戦直前、沖縄戦で敗北していた日本軍は、次は本土で陸上戦になるだろうと予想し、日本各地に毒ガスを配備した。しかし、本土での陸上戦にはならなかったため、結果的に未使用となった。それを戦後、証拠隠滅のために海洋投棄や遺棄をした。

Q: 化学兵器の処理は?
A: 処理方法は確立している。1997年化学兵器禁止条約締結(化学兵器を全部処理することを約束)に基づき、処理をし始めているが、すべて処理するにはまだまだ時間がかかる。
一方で、被害の治療方法は確立していない。しかし、日本政府が本気で取り組めば不可能ではないはず。

Q:  「にがい涙の大地から」の取材をするにあたって、何か障害はあった?
A: 特にない。責任は当時の軍部の指令層にあったと現地の人も思っている。だから、日本の市民が真実を知りたい!という気持ちで行けば素直に受け入れてくれる、と感じた。

Q: この問題に、どのように協力できるの?
A: 小さなことを少しでも実行してみよう。
@お金に余裕があるなら、支援金を振り込もう!
 郵便振替口座 00110-6-760615 チチハル被害者人道支援基金
A裁判を見に行く。
「認めているのに何もしていない」日本政府の罪を糾弾しよう!
と き:9月14日(水)午後1時30分より3時まで
ところ:東京高等裁判所 1階 第101号大法廷

◆◆◆◆◆
!?裁判のホント・ウソ?!豆知識
世論、特に若い人が関心を持って見守っている、という姿勢を見せて裁判官にプレッシャーを与えられる!
世論が味方についていれば、裁判官も勇気をもった決断が出来る!
弁護士も、「絶対に意味がある!」とお墨付き。
「サイバン」と聞くと難しそうだけど、結局関わっているのは人間!
◆◆◆◆◆

B時間もお金もないけれど、裁判官に手紙を書く。(50円、10分で出来る。)
C旧「満州」にいた親戚や知人がいる場合は情報を提供してもらう。
特に現地の中国の人はこの情報を必要としている。旧日本軍が調査もしていない、ということもあり生き残った日本軍の証言がたより。

Q: どんな風に東アジアの人と付き合っていく?
A: まずは友達を作る。そしてまずは東アジアの国々を知る。それから、過去の事実として過去を知り、それを語っていく。そうすることで東アジアの未来に貢献できるはず。
China-Japan Networkでもスタディーツアーもやっているので、是非参加して!

参考図書:
「悪夢の遺産」学陽書房 尾崎祈美子(TVディレクター)著

今も眠る、棄てられた毒ガス

日時:9月7日(水) 場所:ピースボートセンター東京
ゲスト:海南友子さん(ドキュメンタリー映画監督)

DVD鑑賞 ---「にがい涙の大地から」ダイジェスト版---

実は、2年前までこの件についてあまり知らなかった。2年前に勉強を兼ねて中国をいろいろ回ってみた。その時にリュウ・ミンと出会った。最初は「性格の暗い人」というイメージを受けた。が、話していくうちに彼女の父親が日本軍が残した砲弾の被害で亡くなったことを知った。しかも、1995年という最近のこと。自分よりも若い人が最近になって被害を受けているということで衝撃を受け、興味をもった。それから調査をして、これまでに60人くらいの被害者に会った。

ではなぜ砲弾や毒ガスが遺棄されているのか?
1929年から日本軍は毒ガスを作り始めた。日本の大久野島で作り、台湾、中国、ベトナムで使用した。これは国際条約に違反していた。
そのため、敗戦直前に証拠を隠蔽するために、毒ガス/化学兵器だけを土に埋めるようにとの命令が軍部の上部から下った。そして急遽毒ガス/化学兵器を遺棄して軍隊は帰還した。

それがなぜ最近見つかるの?
戦後、農地としてしか使われていなかった土地が、最近の中国の経済発展のゆえに、大きな建物の建設が始まった。そこで、最近になってこのような建設現場で毒ガスが埋められているくらいまで土地が掘り起こされ、被害が出てきている。その度に中国ではメディアで報道され、関心が高い。(日本との違いは明らか。)

■■■■■
!比べてみよう!
現在の日本と北朝鮮の関係と同じなのではないか?
拉致問題をめぐって日本では北朝鮮バッシングが続いている。一方、朝鮮では報道されない。北朝鮮は自分の国に都合の悪いことは報道しない国家体制であるが、日本はそのような報道をしてもよいのにも関わらず、一方的なバッシング報道が起きている。そうなると、むしろ日本の今の状況の方が怖いのでは?
■■■■■

日本政府は、毒ガスの遺棄場所について、60年間一回も聞き取り調査をしていない。
70万発も埋まっていることを認めているにも関わらず、その場所について、そして状況について調査していない。(中国政府は180−200万発と予想している。)

日本にも同じように危険がある。日本軍が遺棄して終戦を迎えた。昔の日本が中国に及ぼしたこと、というよりも今日本でも「そこにある危機」である。

海南さんの姿勢:
自分の国が実際に国際法に違反した毒ガス/化学兵器を作っていて、それが今でも被害を生じている。存在するかしないかわからないイラクの大量破壊兵器のために、大量の資金をかけて自衛隊をイラクに派兵するよりも、この毒ガス事件に対して資金をかけたらどうか?戦後の平和な時代にまだ被害者が出続けるという点で、地雷と類似した状況。この問題に取り組むことで、将来の日本と中国の関係改善に繋がるのではないかと信じて取り組んでいる。