No.24の記事

招き猫

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 もう何年前からになるか忘れたが小さな招き猫が2匹机の前に居る。2センチ3センチの小さな猫でしろと黒、後ろに磁石が着いているので金属にくっつく。ご覧のとおりドラえもん風で何を招いているのかわからない。

 人を招く姿なんだって。「顧客・財宝を招くというので、縁起物として商家などで飾る」広辞苑に書いてある。財宝はいらないけど顧客は招いて欲しいものである。とぼけた顔をしているので顧客ではなく「お友達」ってところである。

 我が母「恵美さん」は神社でお賽銭を上げて祈願するとき「商売繁盛」といつも唱える。自分は年金生活者の82才、同居の娘(私の妹)は教師なので、いくら願っても商売は繁盛しない。私の弁護士稼業のことを願っているんだという。「むつみお客さんはいるのか」とうるさいので「おばあちゃんと同じで人気あるから」と答えておく。誉めて煙に巻くのである。

 今日はうれしい来客。「60才になったら先生のところに必ずお礼に来ようと心に決めていました。」遠く離れた町から電車に乗って東京に出てきてくれた。付き添いの妹さんと2人で。23年前に整理した債務整理事件の依頼者の奥さんである。サラ金事件の走りで自己破産などなく、全部任意整理をしていた。何年もかかって分割で支払った。依頼者は東京の下町で法人タクシーの運転手をしていた。

 定年まで勤め今は嘱託で別の会社に時々来ているという。実家の遠い町で彼女は3人の子どもを育てて義父と義妹を看とったという。本人は東京で羽を伸ばし、妻には甘えっぱなし。病気までする。借金の支払いも全部彼女がやったという。子どもを抱え、当てにならない亭主を抱え、分割金の支払のために自分の実家からお金を借りたという。「何度も別れようと思いました。家出もするんですがなんだか可愛そうになって」3人の子どもは母に似てまじめでしっかりしている。「もうここまで来ましたから」元気に笑う。

 「先生が一番大変だった思います。いつでも先生に助けられたと思っていました」そんなこと無いって。あなたが偉かったのよ。「先生のところに始めてきたとき3組の夫婦が相談者でした。みんな夫がだめで。先生は私たちに夫を殴っていいからといったんです」「私はたたけませんでした」楽しそうに言う。昔から私はそんなこと言っていたんだ。

 私のところに顔を出せない張本人。「来るように言っておいて」といっても彼は来れない。

 私の25年はそんなたくさんの人達に支えられて来た。