最近の日記

ひょうひょうと粘り強く

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 税理士の奥津先生はいつもひょいひょいと歩いている。頑固でめげない。私が乱暴でいい加減な意見やみょちくりんな論理を展開すると困ったような顔をして「そうなんです。日本の税制がおかしいんです」と締めくくる。 事務所の節ちゃんは経理通。お金のことならぴぴっと何でもわかる。「通帳を見ているとお金の動きが面白い」なんていうのである。私は頭が痛くなるだけである。2人で事務所経理システムの打ち合わせをしていた。

 側に寄って行って、「雑食日記読んだ」とじゃまする私。はっきりしない答えの奥津先生に隣のパソコンを立ち上げページを開き、いつもの強要を始めた。困る奥津。「今度見ますから」と言っても解放されない。「このティーカップはベトナムで100円で買ったのよ」「ベトナムにはよい陶磁器がありますからね」おっとわかっているじゃない。100円を誉めないのが不満だけど許してやる。

 今2人は「弥生経理」システムで預金の何とかということをやっているらしい。このシステムの名前を覚えられない私は何度注意されても「弥勒」と言い続けている。「どうしてみろくなの」自分でもわからないのよ。最初の字が同じだからかしら。今ではだれも注意さえしない。完全に見捨てられている。

きっと弥勒菩薩のようにやさしく経理を処理してもらいたいと思っているからなのである。その私にむかって「佐藤先生にも経理を理解してもらわないと」と断固言う奥津先生である。それはだめですから。

好きこそ物の出会いなれ

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今日こそ私の自慢のマグカップ見せてやろう。バナナジュースを飲み終わったカップを洗ってリュックに入れた。事務所に着くやいなや「これよこれ」と事務所のスタッフに見せびらかす。「良いですね」いうまでしつこく迫るので勘のいい一人が「先生すてきですね。私も好きです」と賢明な対応をする。

 よしよしとご機嫌な私である。業務に忙しいスタッフに「今日ティーカップを買いに行くから」と断固言い渡す。新しい事務所で使うテーカップを何にするか何ヶ月も前からうるさい私に「はいはいそうしましょう」と節ちゃんはやさしい。節ちゃん何しろ幼稚園から高校まで一緒の仲、むっちゃんの性格はお見通しである。

 もちろんディスカウント店へ。しろに藍色これに決まってるんですから。七階洋食器売り場のエレベーターを降りて「夏ベストセレクション」の所にすーと行く。きゃーあるじゃない。こんな所で待ってくれた。ミントンのハードウイック、しろとブルーの繊細なパッションフラワーのテーカップが6こ、凄いバーゲンになっているじゃない。

 「よかったですね」心からほっとする節ちゃん。「出会いよね。今日来てよかったでしょう」全部で15個も買ってしまった。6個は持ち帰って事務所でひとくさり。どうでもいいことに巻き込まれ疲れるみんな。

 さてもう一つのティーカップは去年ベトナムで出会った物。ホテイアオイとトンボがゆったりと描かれている。これは100円で見つけた。肉厚で重い。ベトナムの濁った川の水が流れてくる。これも好き。

 どちらも藍色一色。すっきりとモダンである。何色とも言えない心落ち着く深い色である。

ささのはさらさら 七夕の日

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 七夕の日に甲府を訪ねた。暑気払い、加藤夫婦と温泉の露天風呂から甲府市内を一望する趣向。
 妻裕さんは甲府市の市議会議員5期目の重鎮。夫啓二は甲府合同法律事務所の中心。息子三3人は巣立ち、四男犬の太郎も三男の大学入学を見届けて旅立った。2人とも山梨に縁もゆかりもない。乞われて甲府合同に来た夫とともにこの地に来た裕さんは三人の息子と大きな長男、太郎と5人もの男を育てて元気ハツラツ。今では夫を家に残して飲み歩く。ゆくところ敵なしの自称「男気の」人である。 山から下った田圃の縁で「ここでいつも演説するのよ」彼女の選挙区である。「まあ聞いているのは田圃だけだな」ちゃかす夫を無視。当選後毎週支持者向けに手書きのニュ−スを自分で配り続ける彼女こそ草の根民主主義の担い手である。頼りにされて当然である。
 そんな妻をちょっと自慢の夫は「裕は地理感覚はめちゃくちゃだけど妙に政治感覚は鋭いんだよ」誉めたりけなしたり、ケンカしたり、二人は三〇年夫婦をやってきた。学生時代と同じ匂いのまま二人はこれからも夫婦をやるらしい。
 山梨県立美術館でジャン・コクトーの特別展をやっていた。こんな二人になれると思う。 
 のきばにゆれる風は暑くやさしい。

スイカの気持ち

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 8月2日ちょと見たこともないような大きさXLのスイカが事務所に届いた。とにかく大きくて引っ越しのどさくさで気が立っている事務所のスタッフは「どうするんですか」と困惑気味。
「冷蔵庫に入れて冷やし明日から毎日みんなで食べる」「滝沢さん明日は必ずきてくださいね」と私が檄を飛ばす。滝沢さんは日民協のコンピュータをサポートしてくれている縁の下の力持ちである。うちの事務所も彼なくてはIT原始時代である。日民協で私につかまって連れてこられていると言うのが実態。「明日が楽しみで」すと言ってくれたのは律儀な彼だけである。 
 3日4日5日、3時は全部スイカ。デブで大味かと思ったらこれが美味い。歓喜の声を上げながら食いまくるがいかんせん量が半端でない。滝沢さんの奮闘の甲斐があって第1日で半分制覇。2日目は滝沢さんの奮闘空しく残りの半分は冷蔵庫へ。そして今日「先生スイカが待っています」の声。ちょっと疲れ気味のみんな。完食しました。写真は最後の最後のスイカの姿です。

 スイカの贈り主は長野県掛け湯病院でリハビリ医をしている石黒勇二先生。東京医科歯科大学の学生の時交通事故にあって私が担当した。その後突然脳にウイルスが入って脳の一部に損傷を起こしひどい脳性麻痺になってしまう。原因もわからないまま母校の病院のベットで寝たきり、ひらがなを指さしやっと私と会話する彼を見舞ったことがあった。めげない元気な患者だったが私の気持ちは晴れなかった。そこから彼は復学、整形外科医になった。並大抵の努力ではない。掛け湯病院で車いすに乗り、体が利かない言葉にも不自由するその実感を持つ医師になった。脳内出血で倒れた長野中央事務所の富森啓児先生はその彼の患者だった。とっておきの1枚の取材でそれを知った。

その彼が送ってくれたスイカを違う人達と喰らう。人はまわりまわってゆく。スイカの気持ちもうれしいにちがいない。

今日は自転車に乗って

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 法民10月号の打ち合わせ。いつも大荷物大忙しの田部さんと、じっとやさしくやるべきことをやってくれる頼もしい渕上さん。2人の編集委員会若手エースを迎えて楽しい打ち合わせでした。2人とも「ピースボートの船旅コリア・ジャパン未来クルーズ」に8月13日から参加するという。
 50期代の生きの良い法律家達の世界にむけられた翼の軽やかさにため息が出る。彼らが連帯しようとしている人々は地球規模で手をつなぐ。「何でも見てやろう」の時代から」「何でもともにやろう」の時代になっている。 田部さんは大荷物を愛用のママチャリに積んでよたよたと事務所に帰っていく。しなやかで細い体がゆらりと揺れ、道路を渡っていく。見送った私と渕上さんは転ぶんじゃないかとちょっと心配する。暑い日差しの中で「ほんとに田部さんは忙しいんです」渕上さんは静かにつぶやく。

連れ合いにもやさしく

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8月1日の執行部会議に久しぶりに上野登子先生が見えた。ここ5年、「要介護5の夫の自宅介護をしています。弁護士の仕事もほとんどしていません。これからは日民協にもできるだけ出てきたいと思っています」

 上野先生は優しくて強い人である。3人の娘さんを産み育て法律事務所を主宰し、日弁連や日民協の活動もこなしてきた。27年前、研修所にはいる前に先生の事務所を女性だけで訪ねたことがあった。荻窪の事務所の床は板張りでぎしぎし鳴っていた。子育てなんて遠い日だった私たちに「娘はボタン付けなんか私じゃなくて父親に頼むのよ」と言っていた。上野先生の連れ合いはモーレツに忙し銀行マンだった。「父と母は若いときからケンカをしながら暮らしてきました。父が具合が悪くなって母が面倒を看るようになって、初めて二人は夫婦になったんだと思います」三女の言。

「デブの介護は大変だって言ってたのに」家人になじられている私の姿が目に浮かんだ。
   

弁護士むーみんの解決!女の一大事