通常国会の開会まであと一週間。来週の木曜日に「第166常会」が始まる。会期は6月23日までの150日間。これが終われば参院選だ。憲法の命運と大いに関わる。
毎次の国会に、政府与党から「悪法」の提案が続く。「法案成立に反対」と叫び続けなければならないのが、悲しいかな我が国の現実。
この国会の最大の焦点は、「改憲手続き法」案である。当然のことながら、「改憲地ならし法案」であり、「改憲外堀埋め法案」でもある。その内容如何にかかわらず、「改憲の必要なしが民意」だという立場で反対。
しかし、法案の内容に目もくれないのではもったいない。土台、政権与党には民意の正確な反映手続きに関心はない。小選挙区制へのしがみつきが彼らの心根をよく表している。
「改憲手続き法案」の民意をゆがめる醜さも、十分に指摘し反論しなくてはならない。
ところで、ホワイトカラーエグゼンプション(残業代ゼロ法案)については、財界の意を受けた厚労省が提案に熱心だったが、与党は参院選に不利と見て法案提出断念を表明した。
彼らも、「民意」には決して鈍感ではない。改憲も、改憲手続き法も、「民意」を喚起できるか否かにかかっている。
年末からの風邪がまだ治らない。すっかり、健康への自信を無くしてしまった。体調が悪いと、なんとも仕事への意欲が減退する。
ときどき自分の年齢を思いだしては溜息をつく。なるほど、トシには勝てないのだ。
ところが、高齢な政治家諸氏のお元気さには驚嘆せざるを得ない。きっと、それなりの節制をしているのだろう。その点はご立派である。真似をさせていただこう。
ところで、今日は1月17日。12年前の今日、阪神淡路大震災の惨事が起こった。6000人の命の重さに、ただただ黙祷。
12年前、この震災の直後に東京地裁の「市民平和訴訟」で、シンガポールのジャーナリストであるルウ・ペイチュンさんの証人尋問を担当した。彼は、法廷で次のように言っている。
「阪神淡路大震災の被害者5000人(震災直後の人数)ということは、たいへん大きな犠牲です。でも、考えてみてください。アジア・太平洋戦争で日本皇軍が殺戮したアジア諸国の犠牲者総数は2000万人と言われています。今日1日の震災で5000人が亡くなり、次の日も、その次の日も、5000人が毎日毎日亡くなり続けて2000万人に達するまで、どのくらいかかると思いますか。10年かかっても、2000万人には到達しないのです」
おびただしい太平洋戦争の無辜の死者に合唱。不本意に殺戮に荷担させられた皇軍の死者にも。
敬愛してやまない井上ひさしさんに、次のような言葉がある。
「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを愉快に」
なんと、素晴らしくステキな言葉だろう。文章を書くにあたっての心構えとして、これ以上のものはなかろう。
付け加えれば、書くに値することを書きなさい、ということであろうか。
本日の朝日「オピニオン」欄(13面)の「政態拝見」は、中国残留孤児支援をテーマにした達意の文章だ。
「複雑なことの本質をえぐって分かり易く、その本質を語ること深く、しかも柔らかいスタイルで批判は鋭い」
何よりも、安倍首相自身の拉致家族問題への筆法をそのまま借りて、中国残留孤児支援の政治決断を迫っている、その論建てのみごとさ。こんな文章を手際よく書ける能力を身につけたいものだ。
ときどき嫌いになりそうな朝日だが、この記事はステキだ。
「法学館憲法研究所」からご連絡をいただいた。ホームページでの新しい企画への協力依頼。
「全国憲法MAP」と題するページを設け、憲法に関する各都道府県における裁判や運動を順次紹介するのだという。「各地にお住まいの皆さまが憲法をより身近に感じ、生活に密接にかかわる問題として語り合える機会を増やすことができれば幸いであると考えております」とのこと。まことに結構なことではないか。
その第3回として岩手県の「岩手靖国違憲訴訟」を採りあげるので、「この裁判に関連する文章などをご寄稿いただきたい」との依頼。
世の中、捨てたものでもない。こんなことを熱心にやっている人もいるのだ。
私は盛岡の生まれだが、父方のルーツは黒沢尻。今は、北上市の一部。
1970年代のことだが、その北上市に「政教分離を守る会」という市民運動組織ができた。宗教家と教育者と社共の活動家などがこれに参加した。
国家神道が臣民の心の内奥を支配したことについての苦い記憶と、靖国公式参拝への危機意識が、この市民運動を立ち上げた。
この人たちの運動が盛岡にも飛び火して、岩手靖国訴訟を立ち上げ、大きな成果をあげた。
1991年1月10日、仙台高裁は、「天皇と首相の靖国神社公式参拝は違憲」「県費からの玉串料奉納は違憲」と明確な判断を示した。私も、いささかの役割を担ったこの北上と岩手県の運動に、いまだに誇りをもっている。
伊吹文科相の政治資金収支報告問題が報じられたのは、今月11日。各紙とも、「賃料のかからない議員会館を所在地としながら多額の「事務所費」を支出したと政治資金収支報告書に記載し、一部を会合・飲食費や交通費に流用していることが10日、明らかになった」との記事だった。
同様のことは、中川昭一自民党政調会長、松岡利勝農相ら既に複数の政治家で発覚していたが、伊吹さんには、格別の倫理が求められる。なにしろ教育行政を所管する大臣だ。しかも、教育基本法以下の教育法体系の再編を唱導しているさなかなのだ。
この問題発覚が1か月前なら、12月15日参議院で成立した教育基本法改悪をストップさせることができたかも知れない。ウーム、なんとも残念。
でも、この問題、いったい誰が火を付けたのだろう。誰が報告書を丹念に見直したのだろう。その人には最高の敬意を表するけれども、もう1か月前にやってくれてれば、との憾みも残る。
政治資金規正法がザル法だとは誰もが知っているところ。総務省の見解では、「事務所費には領収書の添付不要なのだから問題はない」とのこと。しかし、適法違法の問題と、政治倫理の問題とは次元が異なる。
伊吹文科相に問われているのは教育を語る資格である。彼には、改悪教育基本法以下の諸法の改正を云々する資格はない。
この事件、教育法体系改悪阻止の運動に、大いに活用しようではないか。
この件は、毎日新聞の記事が目に留まった。他紙の記事には問題意識が感じられない。
山形地裁で開かれた、加藤紘一氏実家の現住建造物放火被告事件の初公判。
この日、被告側も冒頭陳述をしたそうだ。われわれも、弾圧事件では大いに被告人の行為の正当性を述べる。
しかし、この事件の弁護人主張は筋が違っていたようだ。
「動機について検察官は「多額の借金や糖尿病から人生に希望が持てなくなり自殺を考え、最後に華々しい行動を起こして仲間に存在意義を示そうとした」と指摘。
これに対して、弁護人は「首相の靖国神社参拝を妨げる者に、かねて強い公憤を抱いていた」と述べ、「加藤氏の母には申し訳ないが、討伐は祖国を守る正当なものだった」と主張した。堀米被告も起訴事実の認否で「加藤氏は売国奴」などと述べ、金子裁判長からたしなめられる一幕もあった」という。
「加藤議員を狙った理由については、参拝自粛を求めた経済同友会の北城恪太郎代表幹事の襲撃を昨年5月ごろ考えたが、月刊誌の加藤議員の対談記事を7月に読んで標的を変更したことが双方の冒頭陳述で分かった。弁護側は、加藤議員が小泉純一郎前首相に靖国神社の前倒し参拝を提言し、中国側の様子も取材したと書かれた部分を、被告が「内政干渉に屈服させた」などと受け止めたことを挙げた」というのが毎日の報道。
法廷で、被害者を「売国奴」と放言する放火犯。これと符節を合わせた弁護人。本来の弁護を放棄し、確信犯として法秩序を攻撃する人格をむきだしつつ、政治的主張を行っているだけではないか。
弁護人から、「被告が標的にした相手に自民党の山崎拓、古賀誠の両衆院議員に加え、「日本経済新聞社の社主」も挙げた」という。言論に対する恐るべき右翼テロ。肌寒さを感じざるを得ない。
この件では、被害者である加藤紘一氏の態度を立派だと思う。恐怖心もあったろうし、腹立たしくもあったろう。その感情を露わにすることなく、終始落ち着いて、決めつけをしない対応には、風格を感じる。
けっして、暴力に屈しない静かな気迫も感じられる。
卑劣な犯人の意図とは反対に、加藤氏を讃え、この事件をむしろ加藤待望論再浮上のきっかけとしたいものだと願っている。
あー、やんなっちゃった。うまくいかないな。どうしてこんなになったんだろう。ぼくって頭悪いから、自分の頭じゃよくわかんないんだ。
ぼくって、部下の作った原稿をテレビの前で読んだり、空母で戦勝演説するなんてかっこいいパフォーマンスするのは、好きだし得意なんだ。もう一度、勝利宣言やりたいな。あと2年もないんだもん。焦っちゃうよな。
大統領となったからには華々しく戦争しなくちゃ、そして勝たなくちゃ、歴史に名を残すことはできないだろう。今考えるのはそれだけさ。
世の中、善と悪しかないんだよ。もちろん、ぼくが善で、ぼくに敵対するものはみんな悪。テロをやるやつは悪で、テロと戦うぼくは善。徹底してテロと戦うのが当たり前だろう。悪は滅ぼさなくちゃ。こんな単純なこと、どうしてみんなわかんないんだろう。
それに、アメリカは正しいだけでなくて強いんだよ。だから、絶対に勝てるはずだった。イラクがアルカイダと繋がりがあるかどうか、大量破壊兵器を隠しているかどうか、そんなことはどうだって良かったんだ。戦いが始まれば、強い者に靡くのが世の常だろう。ブレアーだって小泉だって、シッポを振ってついてきたじゃないか。ここまでは、とても分かり易かった。
だけど驚いた。世界最強のぼくの軍隊が、イラクの国軍には勝てても、イラクの見えない敵には勝てないんだ。世界最強の軍事力も、一国の治安を守ることはできない。どうしてだか、まだ分からない。
いつの間にか、米兵の死者は3000人を超した。米国民の不満を抑えきれない。中間選挙にも大敗だ。国際世論はぼくを悪者と言い出した。アメリカのイメージダウンも甚だしい。
いま、このまま撤退したんじゃ、戦争に負けた惨めな大統領として名を残すことになっちゃう。断固として聖戦完遂あるのみ。一度は相手を華々しく叩いて、上手に引き際を作らなくちゃ。なに?ヒロヒトに似ているって?追いつめられた独裁者は、保身のために同じ思いになるんだろうな。だけど、ぼくはヒロヒトほどの独裁者じゃないよ。少しインチキはしたけど、形の上では選挙で選ばれたんだし、みんな遠慮なくぼくを虐めるじゃないか。
戦争おっぱじめたのが間違いではなかった。勝てさえすれば、戦争に批判なんてありえない。勝てなかったことだけが問題だ。なぜ勝てなかった?戦力の逐次投下で分散させてしまったことが失敗だった。ラムズフェルドの責任だ。ここは、惜しみなく、バグダット中心に大量の戦力を注ぎこもう。直接戦力だけで21000の追加だ。このうち、1割くらいは死ぬかも知れないが、そこは盛大な追悼式で神妙な顔をして立派なスピーチをして乗りきろう。それはぼくの得意分野だ。
敵味方何人死のうと、予算がどうなろうと、国内外の世論がどうなろうと、そんなことは些細なこと。善であるぼくが勝つこと、勝って偉大な大統領として名を残すことが何よりも大切じゃないか。
‥ほんとは、もう自信はないんだけど‥。
有村一巳さんは、裁判所職員で組織する全司法労働組合の元委員長。日本民主法律家協会の代表理事のお一人で、「9条の会・杉並」の中心メンバーとして地域の護憲運動を支えてもおられる。
杉並の区立中学校に扶桑社版教科書が採択されたことを痛恨時とし、大きな市民運動を起こして、4年後の雪辱を期しておられる。
この人の周囲には、いつも明るく暖かい風を感じる。私には望んでも得られない人徳。
その有村さんから、和紙ののし袋に入れた「9条楊枝(大中小各3本)」をいただいた。
次の口上書がはいっている。
「明けましておめでとうございます。
埼玉の家の庭にある香木「黒文字」で年末年始に作りました。
木の特徴を生かして削ってみました。ときどき水に戻して、何回でもお使いください。
2007年1月
9条の会・杉並 有村一巳」
なるほど、私もこうやって人を励ましてみたい。
9本の「くろもじ」心して使わせていただろう。お茶うけをいただくたびに「9条よ、美しく香れ」と、思いを新たにしつつ。
安倍政権発足が昨年の9月26日。それから8日後の10月4日、一通のメールに目が釘付けになった。
送信者は大山勇一弁護士(城北法律事務所)。
「●安倍新政権「美しい国」の本質を見たり!
憎いし,苦痛! 「美しい国」
(にくいしくつううつくしいくに)
回文にすると物事の本質がよく分かります・・」
ウーン、みごと。してやられた。「にくいしくつう」の著作権は彼のものなのだ。
私の知っている限り、「憎いし,苦痛!」がマスコミに出たのはこれ以前にはない。週刊朝日も年明けの号で、「誰が言い出したやら」としている。
大山案をいただいたのは、日民協機関誌の「法と民主主義」12月号。編集後記に当たる「KAZE」の欄に、「回文・美しい国、憎いし苦痛」と大山さんにご登場いただいた。
本日の各紙が報ずるところでは、民主党は次の通常国会を「格差国会」として、この国の苦痛を論点とするという。「美しい国」の本質よ、暴かれよ。
なお、大山さんは回文の達人。靖国の上告趣意書ができたときは、
「くふうこらしかんせい,いいせんかしら,こうふく
(工夫凝らし完成。いい線かしら?幸福)」
と送ってきた。実にいい線行っている。
そのほかにも、
●激務の親王妃2人に何が・・・
「うかつ! 紀子・雅子さま,こき使う」
(うかつきこまさこさまこきつかう)
●安倍総理とタカ派議員の関係とは?
「改憲・核武装」とうそぶく関係か!
(かいけんかくぶそうとうそぶくかんけいか)
●話し合いではなく,核保持へ向かう中川政調会長の発言にNO!
「駄目! 中川異端。対話が要(かなめ)だ」
(だめなかがわいたんたいわがかなめだ)
● 活憲か改憲か? 議論百出する中で,膠着状態を突破せよ
「活憲賛成! かっこいい国会戦,酸欠か?」
(かつけんさんせいかっこいいこっかいせんさんけつか)
みごとなものだ。
ヤフーの「意識調査」なるサイトに、次のテーマが掛けられている。
「安倍首相が年頭会見で「私の内閣で憲法改正を目指す」と表明しました。あなたは憲法改正に賛成ですか? 反対ですか?」
1月4日から10日までの期間ということだが、9日の午後4時現在では下記のとおり。
反対 20104票 53%
賛成 17059票 45%
関心無 1050票 3%
ヤフーにこんなサイトがあることは知らなかった。驚いたのは、その前のテーマが、「2006年のNHK紅白歌合戦。2005年と比べてどうでしたか?」というもの。わずか4日間(12月31日〜1月3日)で、このテーマに15万票の回答が寄せられている。ちなみに、一人が2票は投じられない仕組み。
「紅白歌合戦が面白かったかつまらなかったか」という問には15万人となる回答者が、改憲問題となると4万人となるのだ。この差の10万人は、改憲に反対・賛成のどちらに投票することになるのだろうか。
なお、このアンケートには、コメントが付されている。
「ネット右翼」と言われる人たちの延々たる「意見」の羅列。虐げられている側の人々の屈折した意識構造。いつかは、きちんと向き合わねばならないが、不毛の論争。論争の不毛。
関心ある人は、覗いて見てはいかが?
http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/research/