この件は、毎日新聞の記事が目に留まった。他紙の記事には問題意識が感じられない。
山形地裁で開かれた、加藤紘一氏実家の現住建造物放火被告事件の初公判。
この日、被告側も冒頭陳述をしたそうだ。われわれも、弾圧事件では大いに被告人の行為の正当性を述べる。
しかし、この事件の弁護人主張は筋が違っていたようだ。
「動機について検察官は「多額の借金や糖尿病から人生に希望が持てなくなり自殺を考え、最後に華々しい行動を起こして仲間に存在意義を示そうとした」と指摘。
これに対して、弁護人は「首相の靖国神社参拝を妨げる者に、かねて強い公憤を抱いていた」と述べ、「加藤氏の母には申し訳ないが、討伐は祖国を守る正当なものだった」と主張した。堀米被告も起訴事実の認否で「加藤氏は売国奴」などと述べ、金子裁判長からたしなめられる一幕もあった」という。
「加藤議員を狙った理由については、参拝自粛を求めた経済同友会の北城恪太郎代表幹事の襲撃を昨年5月ごろ考えたが、月刊誌の加藤議員の対談記事を7月に読んで標的を変更したことが双方の冒頭陳述で分かった。弁護側は、加藤議員が小泉純一郎前首相に靖国神社の前倒し参拝を提言し、中国側の様子も取材したと書かれた部分を、被告が「内政干渉に屈服させた」などと受け止めたことを挙げた」というのが毎日の報道。
法廷で、被害者を「売国奴」と放言する放火犯。これと符節を合わせた弁護人。本来の弁護を放棄し、確信犯として法秩序を攻撃する人格をむきだしつつ、政治的主張を行っているだけではないか。
弁護人から、「被告が標的にした相手に自民党の山崎拓、古賀誠の両衆院議員に加え、「日本経済新聞社の社主」も挙げた」という。言論に対する恐るべき右翼テロ。肌寒さを感じざるを得ない。
この件では、被害者である加藤紘一氏の態度を立派だと思う。恐怖心もあったろうし、腹立たしくもあったろう。その感情を露わにすることなく、終始落ち着いて、決めつけをしない対応には、風格を感じる。
けっして、暴力に屈しない静かな気迫も感じられる。
卑劣な犯人の意図とは反対に、加藤氏を讃え、この事件をむしろ加藤待望論再浮上のきっかけとしたいものだと願っている。