No.15の記事

日弁連憲法問題シンポジウム準備状況報告  

本日は日弁連消費者委員会の全体会議。時間を割いてもらって、人権大会第一分科会シンポジウムの準備状況について報告をする。

消費者委員会を選任母体として、第1分科会シンポの実行委員になっておりますので、ご報告申し上げます。

ご存じのとおり、シンポジウムのテーマは、「誰のために、何のために憲法はあるのかー憲法改正論議を検証する」というものです。いま、改憲論議が盛んです。しかし、本当にその改憲論は検証に堪えるものなのか。近代立憲主義の大原則、そして日本国憲法が拠って立つ理念を踏まえて本質的な議論をしてみよう、という趣旨のものです。

実行委員会は、シンポの企画の立案、基調報告書の作成、そして大会宣言案の起草を行ってまいりました。シンポの企画と、基調報告書については、取り立てて報告をするほどのことはございません。当日にご参加いただき、あるいはお読みいただければありがたいと思います。

ご報告しなければならないのは、シンポの翌日の人権大会において採択が予定されている宣言案です。
タイトルは「立憲主義の堅持と日本国憲法の基本原理の尊重を求める宣言(案)」。日弁連の決議ですから、改憲反対という結論にはなっていませんが、立憲主義と現行憲法の理念を最大限尊重すべきことを強調する内容となっています。

問題は、宣言案主文の次のくだりです。
「日本国憲法第9条の戦争を放棄し、戦力を保持しないというより徹底した恒久平和主義は、平和への指針として世界に誇りうる先駆的意義を有するものである」

実行委員会が起案し、シンポの運営委員会も通ったが、正副会長会議で疑問が出ました。「会員の中には反対の意見もある。これで、大会が乗り切れるだろうか」「『戦力を保持しない』を削除した『恒久平和主義』、で十分に趣旨は通じるのではないか」。このことは、皆さんお聞き及びのことと思います。

これに対する実行委員会側の回答は、「いまや、『戦力を保持しない』を削除した裸の『恒久平和主義』とすることが、むしろ政治的な情勢」「却って、これをはずしたら、大会は混乱して乗り切れないことになる」というものです。

今具体的な改憲論の焦点は、96条と9条2項に収斂しつつあります。つまり、「硬い改憲手続き条項を柔らかくして今後の憲法改正を容易にすること」、そして平和主義の内容を大きく変更して「海外で戦争のできる普通の国にすること」の2点です。

改憲を主張する人たちも、恒久平和主義の尊重を強調し、9条1項の堅持も口にするのです。問われているのは9条2項、まさしく「戦争を放棄し、戦力を保持しないという恒久平和主義」なのです。これをはずしてしまったら、改憲論の何も検証の対象とはならなくなる。大会宣言に何のインパクトもなくなってしまう。そのような、差し迫った憲法状況だということなのです。

幸い、基本的に正副会長会もこの点を了解し、最終的にはこれで理事会も通ることになろうと思われます。しかし、大会の場でどのような議論が出てくるか、予断を許さないものがあります。

日弁連は、これまで人権擁護のために奮闘してきました。憲法理念の実現についても実践を積みかさねてきました。戦争こそ最大の人権侵害、戦争こそ最大の環境破壊、戦争こそ日本国憲法の拠って立つ理念の対立物。総選挙に大勝した政権党が憲法改正草案を発表するその時期に、法律専門家の集団である日弁連が憲法問題でどう発言するか、大きな注目を集めることと思います。

是非、皆さんシンポにご参加ください。そして、大会宣言案の討議に参加していただき、圧倒的多数で宣言を採択させてください。