No.33の記事

ついに出た「側室制度の復活」論 

話題の韓国ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」にはまった。聡明でけなげな女性が、数々の困難を乗り越えて宮廷の料理人として、また医官として成功を勝ち取る物語り。主人公の高潔さと、ひたむきさが爽やかで心地よい。ついつい、引き込まれた。毎週木曜日の夜が楽しみだったが54話で完結した。

よくできたドラマで楽しかったが、ストーリーのところどころに違和感を禁じ得ない。一方に貧しく無知な庶民‥。対して、聡明で優雅な王‥。庶民に対する親愛を忘れぬチャングムだが、けっして王政自体への批判や矛盾を語ろうとはしない。諸悪は君側の奸にあり、王自身は好人物に描かれる。人物のセリフや行動が現代的なだけに、なんだこれは‥。

とりわけ、王の側室の描き方に最大の難点。チャングムの親友は王に見そめられて、「幸せな側室」となる。チャングム自身も、医官でありながら危うく側室に‥という場面がある。宮中の女官すべてが側室候補。到底嫌とは言えない。そのために、結婚だけでなく恋愛もご法度なのだ。現代にこのシチュエーションでドラマを作ることが土台無理と言わざるを得ない。

側室とは権力の世襲制に伴うシステム。とりわけ、「万世一系・男系男子」などという神話に固執するにおいては不可欠な制度。現に日本では、天皇の側室なるものがなくなってわずか3代で、男系男子の世襲は危殆に瀕している。

で、いずれは出てくるだろうと思っていた、「天皇に側室を」の論議。遂に出た。皇族からだ。4日付の毎日によれば、三笠宮の長男・寛仁(トモヒトと読む、59歳)さんが、ある福祉団体の会報(9月30日発行)にエッセーを寄稿している。その中で、「女性・女系天皇の容認」に疑問を投げかけて「男系男子」継承を訴えているという。

「万世一系、125代の天子様の皇統が貴重な理由は、神話の時代の初代・神武天皇から連綿として一度の例外もなく『男系』で今上陛下まで続いてきているという厳然たる事実です」と言っているとか。フーン、そんな「厳然たる事実」は初耳だが、そんなふうに教えられているんだ。

で彼は、男系男子世襲維持のための4例の具体策のひとつとして、堂々と「側室制度の復活」を挙げているという。皇太子とその夫人に、寛仁・側室復活論に対する意見を聞いてみたい。いや、聞くまでもない。側室復活論の出現は、天皇制が、あるいは世襲制の維持が、いかに現代に無理な制度であるかの象徴ではないか。