日弁連大会の本会議。3時間の議論を経て、憲法問題についての宣言を採択した。日弁連が改憲問題に踏み込んだのは、初めてのこと。
宣言の標題は「立憲主義の堅持と日本国憲法の基本原理の尊重を求める宣言」というもの。このサイトの「ひろば」に全文をアップするので、是非引用し活用していただきたい。これが、全弁護士が加盟する日弁連の見解である。宣言は、「改憲反対」とは言っていない。「憲法9条2項堅持」との言葉もない。しかし、その慎重な姿勢にかかわらず、宣言の内容が、明らかに日本国憲法の理念を擁護に値するものと高く評価していることが明らかである。宣言の理由までお読みいただけば、さらに明瞭に、立憲主義、国民主権、恒久平和、人権尊重を擁護する立場から、改憲論を批判していることを読み取っていただける。対立の焦点である集団的自衛権についても、これを明白に否定する立場が展開されている。自民党の50周年記念大会を目前のこの時期に、この日弁連宣言が採択された意義は小さくない。
日弁連は全弁護士が加盟を強制されている団体で、共通の思想信条を有する者の集合体ではない。弁護士会内部の政治的見解の分布は、社会全体の縮図と考えてさほどの違いはなかろう。それでも、この宣言が法律を学び、法律を職業とする専門家集団の常識的見解なのである。
3時間の議論の大半は、この決議案でよいのか、もっと曖昧さを残さない明確な改憲反対を言うべきではないのか、という角度からの原案に対する批判をめぐる議論だった。私も個人的には必ずしも満足し得ないところは残るものの、その性質上どうしても全メンバーの意見分布に十分に配慮せざるを得ない。成員全体の認識から乖離した決議は、いかに内容が立派でも力にならない。この原案をまとめるために半年近くもかけて手続きを踏んできている。圧倒的多数の賛成でこの宣言を通すのが、今もっとも大切だというのが私の立場。
幸い、宣言は賛成多数で採択された。
ハイライトは、以下の部分である。
「日本国憲法の理念および基本原理に関して確認されたのは、以下の3点である。
1 憲法は、すべての人々が個人として尊重されるために、最高法規として国家権力を制限し、人権保障をはかるという立憲主義の理念を基盤として成立すべきこと。
2 憲法は、主権が国民に存することを宣言し、人権が保障されることを中心的な原理とすべきこと。
3 憲法は、戦争が最大の人権侵害であることに照らし、恒久平和主義に立脚すべきこと」
「日本国憲法第9条の戦争を放棄し、戦力を保持しないというより徹底した恒久平和主義は、平和への指針として世界に誇りうる先駆的意義を有するものである」
「当連合会は、憲法改正をめぐる議論において、立憲主義の理念が堅持され、国民主権・基本的人権の尊重・恒久平和主義など日本国憲法の基本原理が尊重されることを求める」
この宣言は、日本国憲法擁護の内容であって、しかも全弁護士が加盟する集団の宣言としての重みをもったものである。討論の中で強調されたのは、「これが第一歩」だということ。弁護士会の決議としても、国民運動へのメッセージとしてもこれは第一歩。情勢の進展如何によっては、第二歩、三歩の宣言・決議が必要になってこよう。そのときには、もっと具体的に、切り結んでいる具体的課題に肉薄して日弁連がはっきりとものが言えるようになっていくだろう。