7月6日、全国15地裁で闘われている中国「残留孤児」国賠訴訟で、全国に先駆けて、大阪地裁で判決が言い渡されました。
原告の請求を全面的に退ける不当判決でした。
夜には、日本教育会館で判決報告集会が開かれ、全国の原告、弁護団、支援者ら約400人が集まり、不当判決にめげず闘い続ける決意を新たにしました。
判決要旨・全文、各地原告・弁護団声明、大阪判決7・6報道、各新聞社社説など
京都原告団 帰国者二・三世のHP
http://www.geocities.jp/genkokusien/7.6.html
判決要旨、各地声明、日弁連会長談話、各新聞社社説など
中国残留孤児in岡山
http://www.geocities.jp/czk_oka/
判決要旨・全文
中国「残留」日本人孤児京都国家賠償訴訟訴訟弁護団HP
http://www.geocities.jp/zanryukoji2003/
毎日新聞
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20050706k0000e040042000c.html
共同通信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050706-00000179-kyodo-soci
2005(平成17)年7月6日
厚生労働大臣 尾辻秀久 殿
全 面 解 決 要 求 書
中国「残留孤児」国家賠償訴訟原告団全国連絡会
中国「残留孤児」国家賠償訴訟弁護団全国連絡会
中国「残留」日本人孤児は、日本の国策である満州移民政策が生み出した犠牲者である。にもかかわらず、日本政府が敗戦以来取ってきた孤児政策は、政策とは言えないほど貧困である。日本政府は、本訴訟を機に、「残留孤児」に対する施策を抜本的に転換し、「孤児問題」の全面解決を図るよう要求する。
1 責任の明確化と謝罪
(1) 早期帰国のための施策をとらずに「残留孤児」を中国に放置し、帰国後も十分な支援策を立案実施しなかったことの責任を認めること。
(2) その結果、「残留孤児」に多大な犠牲を強いたことに対し謝罪すること。
2 生活保障・生活支援
(1) 「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立支援に関する法律」(自立支援法)を改正し、国の責任において「残留孤児」の生活を保障する旨明記すること。
(2) 「残留孤児」の生活保障のため、「残留孤児」を対象とした新たな給付金制度を創設すること。
「残留孤児」が死亡した場合には、遺族年金として、配偶者に継承させること
(3) 残留孤児が、地域で孤立することなく、また安心して医療を受け、住宅を確保できるよう、生活全般にわたる支援制度を整備すること。
(4) 都道府県に1〜2カ所の日本語教育を受けることができる機関を設置すること。
(5) 働く意欲と能力のある者に労働の場を保障すること。
3 二世・三世対策
下記のような二世・三世の自立を支援する施策を確立すること
(1) 就学・就労の支援を行うこと。
(2) 住宅確保の支援を行うこと。
(3) 国籍取得、在留資格の付与を容易にすること。特に国籍法附則第5条を改正して、女性孤児の子の国籍取得を容易にすること。
(4) 日本語教育の支援を充実すること。
(5) 安易に送還を行わず、残留孤児の家族であることに十分配慮すること。
4 歴史的検証・啓発活動
具体的には、満州移民政策や引揚政策についての歴史的検証をすること、「残留孤児」が生まれた歴史を教育の場で教えること。
5 損害賠償
(1) 国の政策によって原告ら「残留孤児」が受けた損害を賠償すること。
(2) 訴訟遂行費用を支払うこと。
6 定期協議
「残留孤児」問題の抜本的解決のため、原告団・弁護団と厚生労働大臣が定期的に協議する場を設けること。
7 関連する事項
(1) 残留婦人にも同等の支援政策を行うこと
(2) 在中国「残留孤児」について、家族を分断することなく、希望する者の早期帰国をはかるなど、適切な施策をとること。
(3) 「残留孤児」の養父母について、国として、謝恩の事業など適切な施策をとること。
2005年7月6日
抗議声明
中国「残留日本人孤児」国家賠償大阪訴訟の不当判決について
中国「残留孤児」国家賠償訴訟原告団全国連絡会
中国「残留孤児」国家賠償訴訟弁護団全国連絡会
本日、中国「残留日本人孤児」国家賠償大阪訴訟について、大阪地方裁判所第8民事部において判決が言い渡された。
全国15の地方裁判所で、2000名を超える「残留日本人孤児」が原告となり提訴している事件の中で、はじめての司法判断である。
大阪地方裁判所は、中国「残留日本人孤児」が求めていた国の賠償責任を認めず、原告らの請求を棄却する判決をくだした。
この判断は、「残留日本人孤児」が強いられた苦難の人生と日本に帰国後、普通の日本人として人間らしく生きていくことが困難となっている「残留日本人孤児」たちの生活の実態を無視し、司法の救済を放棄した不当な判断である。
この判決は、早期帰国実現の義務は認めながら、その義務違反は日中国交回復後に長期にわたり遅延が続いた場合に限定し、違反は認められないとした。しかし、判決も認める早期帰国実現義務は、戦後国が一貫して負ってきた義務であり、戦時死亡宣告制度制定後、国はその義務を誠実に履行してこなかった。判決はこの点を看過したものである。
また判決は、中国「残留日本人孤児」が負わされた被害を「戦争被害一般」として切り捨てた。私たちが救済を求めているのは、中国「残留日本人孤児」の戦争自体により受けた被害ではなく、戦後日本への帰国があまりに遅れ、帰国後の生活自立が困難となった深刻な戦後の被害である。
「残留日本人孤児」たちは、1回目は敗戦時に国に棄てられ、2回目は戦時死亡宣告制度などによる帰国政策放棄により棄てられ、そして3回目は帰国後、冷たい政策により国に棄てられた。そして、この司法の判断は、孤児たちを4回目に国が棄てさる非情な判決といわざるをえない。
私たちは、国民の人権侵害を救済する役割を担う司法が、その責任を放棄したものとして、この判決に対して、強く抗議するものである。
私たちは、正当な判断を求めて、高等裁判所に控訴するとの現地原告団、弁護団の方針を強く支持するとともに、全国15地裁で展開されている原告団や弁護団が力をあわせて、国の責任を認める判決を獲得するまで闘い続けることを表明する。
私たちは、本日の大阪地方裁判の判決にかかわらず、政府が、「残留日本人孤児」たちが悲惨な生活実態に置かれていることを直視し、「残留日本人孤児」に対する施策を抜本的に転換し、「孤児問題」の全面解決を図るよう要求する。
第1に、国の責任を認めて謝罪すること、第2に、国の責任において「残留日本人孤児」の生活保障を行うことを法に明記し、「残留日本人孤児」を対象とした新たな給付金制度を創設することなど、私たちが要求する全面解決要求事項について、政府が原告団、弁護団との間で早急に協議するよう求める。